Leningrad hotel

『レニングラードホテル』と『桃』~“美丈夫”の日?~

Leningrad hotel

ムード溢れる『レニグラード・ホテル』入口。お花も沢山届いていました。

桃

入口に飾られているのはフライヤーの表、内側とのコントラストが印象的

モノクロを開くと色っぽい桃色、なのですがこれも上手に撮るのは難しい色

舞台の多い時期でどれを見に行くか迷います。
昼はスパイラルホールで『レニングラードホテル』、夜は神楽坂セッションハウスで『桃』。

 

『レニングラード・ホテル』は首藤康之さんとCAVAによるもの。
チラシ、ポスターの雰囲気そのままの洒脱でスタイリッシュな舞台。席におかれているインビテーションカードのような当日プログラムも洒落た作りでした。台詞がないのに台詞が聞こえてきそうな独特の世界をキャラクター設定がはっきりした出演者で楽しむことができました。
首藤康之氏の存在感は舞台を引きしめているように感じました。バレエ・ダンサーから始めて着実に新しい表現の世界を広げていく首藤康之氏の姿は頼もしいな、と感じます。そしてもっと見たいと思った舞台でした。

 

夜は『桃 Spooky action at a distance!!』
こちらは言葉も発する作品でしたが、色々な感覚を刺激してくる舞台でした。振付の鯨井謙太郎氏は意外な事にソロは昨年が初めて、今回は多人数のダンサーを振付。これまでと違う方法論を試みたとの事で、定方まこと氏とのユニット、CORVUSともまた違った世界観で、この先も楽しみ。
当日プログラムの「地上で起る事は 地上で終る 地上で起こらぬ事は 地上で終わらぬ」という一文が残りました。

 

そして、アフタートークでもなるほど、と思う事が色々ありました。
まさか本当のお母さまとの共演とは不勉強にして気付きませんでしたし。
鯨井氏は何といっても身体が切れるので、動いてしまえば圧倒的なのですが、動かず表現をというところはまだまだよくなりそう。

 

いずれも見応えのある公演でした。

ジゼル

『ジゼル』から『Mariage』へ… 『ジゼル』@上野 東京文化会館  CAT-A-TAC『Mariage』@神楽坂 セッションハウス

新国立劇場バレエ団の『ジゼル』 劇場は実は水辺にあるとも言えます(ヒラリオン・ハンスが落とされるのは沼ですけれど)

ジゼル

K Ballet『ジゼル』の公演プログラムはいつも大判サイズです

CAT-A-TAC

作品フライヤーからも楽しさが伝わる?!

グッズデザイナーでもある藤田善宏氏によるグッズも魅力的。昨年のバッグと今回のTシャツ。あまりグッズに興味がない私もつい欲しくなる可愛さです。

 今年の日本は『ジゼル』の当たり年と言えそうです。
ボリショイ・バレエ団に始まり、新国立劇場、K Balletと『ジゼル』が続きました。
難しい事は承知ですが、“『ジゼル』共通チケット”のようなものがあれば、手軽に違うカンパニーで同じ作品を見る楽しさを多くの人が楽しめるのに…と思わずにいられません。バレエは作品で見ても面白いですし、人で見ても、縦糸横糸色々なので、そうした楽しみ方に多くの人がアクセスできればいいなと思います。

 

 『ジゼル』は『白鳥の湖』と違って結末がバージョンやバレエ団によって違うということはありませんが、役名含め違いはあります。
また、人物や心情の描き方も様々です。ジゼルは気弱で病弱な少女なのか、元気いっぱいだけれど心臓に持病があるという影を持つ少女なのか、アルブレヒトの恋は戯れなのか、本気なのか、そしてヒラリオン(新国立バレエ団上演のセルゲーエフ版ではハンス)の姿は粗野で向こう見ずな姿から、「愛されキャラ」まで幅広いですから、見どころが沢山。同じバレエ団でも踊る人によって作品世界はもちろん変わりますから、そんな楽しみ方もしたいものです。

 

 K Balletの荒井裕子氏のジゼルは本当に可愛らしい町娘。その純真な恋心が悲劇へ向かう様は心に迫るものがありました。ジゼルになってからの凛とした姿、そしてふわりと跳ぶ様はやっぱりロマンティック・バレエの傑作の一つだなと思う出来栄え。
山本雅也氏は瑞々しい王子を演じ、好印象。堀内将平氏のヒラリオンはジゼルに獲物ではなく花をプレゼントしますが、それにすら気付いてもらえず、苛立ち、苦しむ姿も印象に残りました。また、アルブレヒトの従者ウィルフリードの心情、行動にはリアルな人間を感じました。
 新国立劇場の『ジゼル』は木村優里氏で見ましたが、とても丁寧で繊細なジゼル、本当に飛んで消えてしまいそうな儚い佇まいでした。渡部峻郁氏は少しのほほんと育てられた王子という印象、ハンスの中家正博氏の演技力はインパクトの強いものでした。
 写真が撮れませんでしたが、ロビーの氷のデザートも気分にも陽気にもぴったりでした。こういう「遊び」も劇場には大切だな、と思います

 

 『ジゼル』を見た後で向かったのは『Mariage』…とちょっと面白い取り合わせになりました。
CAT-A-TACはコンドルズのメイン・ダンサーの一人である藤田善宏氏の個人ユニットですが昨年12月の『FUTARI de ZUCCU』も楽しくてちょっとキュンとする作品でした。今回も遊び心に溢れ、肉体的には実は難しい場面もさらりと面白く見せたり、何とも軽やかで個人のキャラクターが立った作品で、楽しく幸せな気持ちになりました。説明的すぎないけれどストーリーはクリア。まさにフライヤーにある「ちょっと変わったパフォーマンスダンスストーリー」の通り。
 ダンスにあまりなじみがない人をお連れしてもきっと楽しんでいただける作品。それでありながらダンスとしても面白い!藤田善宏氏の作品は今後も見たいな、楽しみだなと思います。

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

初めての「鎌倉祇園」~ 京都のお祭を追いかけていたら地元のお祭に出会いました~

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

八雲神社から白丁烏帽子姿たちに担がれて御神輿が出発、大町町内をめぐります。

大町四つ角での神輿振り。

大町四つ角での神輿振り。夜ははんてん姿で担がれます。「悪疫退散招福繁昌」が奉舁するひとにも参拝する人にも約束されるそう。

祇園祭の本を書いていたお正月にたまたま立ち寄った八雲神社。「神社略記」によると1081~1084年頃、鎌倉で悪疫に苦しむ住民を見て新羅三郎義光公が京都の祇園社を勧請し祈願したのが始まりとのこと。

 

そういえば大町にある「祇園山」は小さい頃ハイキングに行った記憶がぼんやりとありますが、その「ぎおんやま」が「祇園」と関係あるとは考えてもみませんでした。(明治維新で「八雲神社」に改称されたそう)

 

今年は近くにお住まいの方にお招きを受けてひさしぶりにのんびりとした日を楽しみました。白装束は清々しく、夜の三基の御神輿が出る場面はなかなか壮観。

ボリショイ・バレエ団来日公演@東京文化会館

左からワディム・レーピン、スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

左からオリガ・ゴロジェツ ロシア連邦副首相、ウラジーミル・ウーリン ボリショイ劇場総裁、アレクサンドル・ジュラフスキー 文化副大臣(写らなかったのですがアンドレイ・コンチャロフスキー映画監督、エヴゲーニー・アファナシエフ駐日ロシア大使らも)

フォトセッションを待つ美しきザハロワ。記者会見なのに圧倒的な美しさに目を奪われてしまいました…

会場内には来日60周年についてのパネル展示も…

あまりいい写真が撮れなかったのでオフィシャルより、ワディム・レーピンとスヴェトラーナ・ザハーロワ

 ボリショイ・バレエ団が来日公演を行っています。初来日から60周年も話題です。最近使われなくなった言葉ですが、オーケストラ、指揮者、バレエ団の「引っ越し公演」です。

 

『ジゼル』を見に行きました。沢山のジゼルを見ていますが、今回のボリショイ・バレエ団の『ジゼル』、主役はもちろんですが、群舞のすばらしさやクーランド公の圧倒的な存在感と演技力も強く印象に残る独特の味わいでした。技術のすばらしさは言うまでもなく、しかも高レベルに揃っていて圧巻です。作品全体を通じて世界がしっかり立ち上がる「舞台芸術」としての美しさが堪能できました。
 これから見る『白鳥の湖』、『パリの炎』もとても楽しみ。
 まだ公演によってはチケットがあるようですから、迷っている方は是非!!と関係者でもないのに宣伝したくなる素晴らしさです。

 

 以前マリインスキー・バレエ団が2000年の来日公演で『眠れる森の美女』を上演した時もあまりに素晴らしくて、帰途電車内から知り合いに見た方がいい!!とメールし続けたのを思い出しました。その振付家セルゲイ・ヴィハレフの死去の報には驚きました。ご冥福を心から祈ります。復元上演にも積極的に取り組まれ、一方で新作もとまだまだ活躍が期待されていた振付家でしたから本当に残念です…。

 

 公演の前にロシア大使館での『ロシア・シーズン』及び『トランス=シベリア芸術祭in Japan2017』記者会見に出席しました。
政府肝いりで始まった『ロシア・シーズン』とあって副首相も出席する会見となりましたが、詳細はこれからといったところのよう。(プレス資料にも「セゾン・リュス」と「ロシア・シーズン」が混在、会見ではバレエ・リュスの「セゾン・リュス」にちなんでというようなニュアンスの発言もありましたが、バレエ・リュスの「セゾン・リュス」は1年目の準備期間はロシア帝室を背景にしていたものの、結局はそれらの援助を失ったセルジュ・ディアギレフによる興行でしたから「?」という気持ちも…。専門家はロシアには沢山いるはずですから色々な事情があったのでしょう。)
『トランス=シベリア芸術祭 in Japan2017』の芸術監督はワディム・レーピン。スヴェトラーナ・ザハーロワとは夫婦ですが、どちらも最高峰の芸術家。開催は渋谷Bunkamuraで2プログラム『SVETLANA ZAHAROVA AMORE』が9月26日、9月27日、『PAS DE DEUX FOR TOES AND FINGERS』が9月29日。(前橋公演は10月1日)
前者はザハロワの会見での言葉を借りれば「愛というテーマに貫かれた3つの作品」、まったく違う世界なので「「百聞は一見にしかず、是非両方見て欲しい」とのこと。

 

 ザハーロワが圧倒的な美しさで、自ら日本が夫との出会いの場所だったというエピソードも披露しました。共演するデニス・ロヂキンも会見で抱負を語りました。どのような公演になるのでしょうか。

レセプションで挨拶するポルーニン、踊りのアグレッシブさとは裏腹の繊細な雰囲気

「黄金週間」いろいろ~ポルーニンから夜光虫まで~

レセプションで挨拶するポルーニン、踊りのアグレッシブさとは裏腹の繊細な雰囲気

『ヴンダーカンマー』榎忠、大須大作。使用済弾頭が並び、油の匂いがリアルでした

『Training Day-樹脂片観音菩薩像-』大森記詩

近づくと武器のプラモデルでできています…

岡本光博作廃棄物がつまったフレコンパックを擬人化した「#255DADAモレ」、青秀裕の「Ghost Lightning」からなる作品『トモダチ大作戦』。実物大だというF-35戦闘機はこんなスケール。

奈良美智新作『森の子』ご一緒した榎本了壱氏と

勅使川原三郎と佐東利穂子による『トリスタンとイゾルデ』

ロビーでも盛り上がる独特のテンション↑

『花粉革命』初日挨拶をする笠井瑞丈氏、後ろのポスターのデザインも実は笠井叡氏初演と同じイメージ

羊も観客も増量?

ROSASは『Fase』(1982年初演)と『時の渦-Vortex Temporum』(2013年初演)の2本

これほどの夜光虫は初めて見ました。上手に撮れていませんが幻想的でした

 世間は「黄金週間」だったようですが、普段よりマチネ公演が多いかな、というのが正直な感想。

 

 青森県立美術館の会議に出席し、『LOVE LOVE ショー2』(1は2010年開催)展を見ました。タイトルから想像できないなかなか政治的主張も強い作品も出品されていて、こうしたものが県立で開催できるのは今の日本で良いことなのでは、と思いました。ちなみに「出逢いをコンセプトとした展覧会」とのことなので、「ラブラブ」からイメージするものとは違って当然だったのですが…。新しい奈良美智作品も見ることができました。そして2006年から11年ぶりに4枚揃った『アレコ』の幕も。(2021年3月頃まで4枚見られるとのこと)

 

 映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン-世界一優雅な野獣』のプロモーションで来日していたポルーニンのイヴェントにも出席。奏楽堂でパイプオルガンを背景にして踊られた「Take Me To Church」は美しいものでした。久しぶりに、あぁ美しい身体(特に脚)を見たという気分でもありました。映画は7月公開、必見です!

 

 両国のシアター・カイでは『トリスタンとイゾルデ』。勅使川原三郎氏の最近の活躍ぶりは本当に言い古された言葉ですが「目覚ましい」としかいいようがありません。あの長い作品を1時間という時間に凝縮して、触れない愛を目の前で展開する舞台でした。目が離せず、そしてもっと見ていたいと思う舞台でした。

 

 六行会ホールでの『King of  Buck』は若いエネルギーがほとばしる舞台と観客。KRUMPというロサンジェルスで生まれたダンススタイルによる公演。考えてみたらバレエでも存在しますが、10代のダンサーが活躍も目立ちます。開演前にもロビーで踊る人が…という熱さは独特です。それぞれの場面という設定で見せるのはなるほど、と思いました。次の才能、それも舞台作品を作るような方向性を期待したいなと思ってしまいます。

 

 世田谷パブリック・シアターでは『花粉革命』。16年前(そんなに経ったとは驚きです)の笠井叡氏の踊るイメージが息子である笠井瑞丈氏のダンスから蘇る体験も独特でした。初日に見たのですが、「振り」が自分の身体にさらに入っていきそうで良くなりそうと話していたら、実際その後見た方からはそうだったという感想を聞きました。強烈で鮮やかな作品。また見たいな、と思いました。

 

 ROSAS『時の渦-Vortex Temporum』は最初7人のミュージシャンが登場して演奏するところから始まり、ダンスはどこでするのかしらと思って見ていたのですが、まさかグランドピアノまで一緒に移動するとは。多層的な時間と音楽が重なり合うダンス作品で、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの振付家としての円熟も感じられる作品でした。

 池袋芸術劇場では“タクト・フェスティヴァル2017”も見る事ができました。『月と太陽-Eclipse-』、共にバリの芸術であるガムランの演奏と影絵という他にはない組み合わせと面白さ。ワークショップも見学しましたが、かなり細かい動きができる影絵はなかなか複雑、上演中は見えませんがそれぞれに実はカラフル。楽器も一つ一つが美しく、演奏者のバティック衣裳も素敵でした。シルコ・アエレオの『ピアニスト』は笑いも、客席とのやりとりも楽しい作品。笑いが止まらない人も続出でした。

 毎年恒例となった感のある羊も今回は劇団コープスの20周年とのことで、「ひつじ増量計画」との広告通り、多頭になっていました。観客も沢山。

 

 そしておまけは30年ぶりという由比ヶ浜海岸の夜光虫。55日の舞台帰途、Twitterで画像を見て本当かな、とビーチサンダルに履き替えて見に行きました。想像以上の光と美しさでした。残念ながら写真は今一つですが、光のビーチ、という感じ。その後深夜2時まで134が渋滞としたと聞きましたが、これは翌日の仕事がない連休ならではかしら…。

『バクスト~バレエ・リュスからオートクチュールまで』展@パリ・オペラ座

展覧会入口

手前から『シェエラザード』のゾベイダのヘッド・ドレス、衣裳、壁には『火の鳥』の衣裳のタマラ・カルサヴィナ、その奥にもバクストの舞台衣裳デザインが見えます。

バクストからディアギレフへの手紙も(1919年3月24日付)

バレエ・リュスの大パトロネス、ミシアのための帽子デザイン。バレエ・リュスで活躍している時期に手掛けていたのも興味深い事です。

出品内容の多くが既に見たものだから、見送ろうかなと一度は思ったものの、やはり見たくなって閉幕間際のバクスト展を見に行ってきました。

以前、同じパリ・オペラ座ガルニエの会場で開催されたバレエ・リュス、バレエ・スエドワ展の時より明らかに入場者が多かったのは全体の入場者が増えているからなのか、それともバクストにある程度知名度が(日本と違って)あるのかは判然としませんでした。

 

ファッション・デザイナーとしての部分もクローズ・アップして紹介していましたが、これは忘れられがちな彼の顔の一つかもしれません。時期もファッション・ウィークに重なっていたので、そうした方々も足を運ばれたかもしれません。

バクストは帽子、衣裳、テキスタイルなどもデザインも手がけていましたが、そうしたデザインの展示は見に行った価値がありました。

彼のデザインの影響力は死後、現在に至るまで定期的に繰り返しデザイン・ソースとして多くのデザイナーに用いられているほどです。出品されていたカール・ラガーフェルドによるクロエだけではなく、1998年のガリアーノによるクリスチャン・ディオールのコレクション(ショーも『牧神の午後』の動き、イメージが多数ちりばめられていました)、エルメス、稲葉賀恵…と色々なデザイナーが用いています。

画家、舞台美術家、衣裳デザイナー、そしてテキスタイル、ファッション、さらにはコティなどの化粧品パッケージまで手広い彼の活躍を紹介した展覧会でした。

 

会場では『牧神の午後』『薔薇の精』も上演されていました。3月31日に1日だけ日本で上映された2009年のバレエ・リュス記念公演も一部場内で上映されて、こちらもなかなかの混雑ぶりでした。

 

なかなか豪華なカタログも発行されました。出品作品についてはもちろん、詳細な年表に映画、デザイナーとしての顔、また映画との問題など内容も充実しています。会期後もオペラ座や書店で購入可能。

SIMON GRAICHYピアノ・リサイタル@シャンゼリゼ劇場

当日プログラムも12pの充実したものでした

終演後のロビーに登場。サインにお話にと長蛇の列ができました。手の大きさも印象的

 今回の渡仏の公演で一番心に残ったのがSIMON GHRAICHY のリサイタルでした。

会場は、『春の祭典』100周年上演の記憶もまだそう古くはないシャンゼリゼ劇場。

 

 バレエ、ダンスがない日にリサイタルがあったので、当日になってふらりと出かけました。

これがびっくりするほど煌めきのある演奏だったのです。

 

 ピアノ好きの方、音楽好きの方には日本でも知られている人なのかもしれませんが、私は不勉強にして知らなかったので驚きました。出てくるだけで歓声が上がっていましたし、後で気付きましたが、地下鉄には多くのポスターが貼られていましたから話題の公演だったのかもしれません。

 

 1曲目のアルトゥロ・マルケスから小さな美しいきらびやかな打ち上げ花火のように頭の中(なのか目の前なのか…)ではじけ続ける感じの音。ずっと聞いていたいと思ってしまいました。

 演奏曲は9曲、ドビュッシー、ファリャといったバレエ・リュスでも同じの面々も、またリスト、アルベニス等多彩。オリジンであるメキシコの作曲家マニュエル・マリア・ポンセ、や南米の作曲家ルネスト・レクオーナ、エイトル・ヴィラ・ロボス、カマルゴ・グアルニエリといった様々な表情の曲を独自のカラーで弾きこなすピアニスト。

 アンコールには何と新譜CD『SIMON GHRAICHY HERITAGES』で世界初演というパーカショニストとの演奏で、CDと曲順構成が同じというちょっとしゃれた演出。これがまた面白くて、そういえばピアノは打楽器、打楽器同士なのに、こんなに違う、そしてある点で共通…とわくわくする気持ちで聞きました。

 

 当日でしたし、あまりいいお席を取れなかったのですが、これもまたいい経験になりました。この劇場はどこの席でも本当に音が良い事を実感したのです!

シャンデリアも近くで見られましたし、劇場上部の装飾や階によって違う扉の装飾も楽しめました。劇場は色々な席で見ると違った楽しさがありますね。(バレエ、ダンスはやはり正面を取ってしまうので知らなかったのです。)

 アールデコの粋を集めたこの美しい劇場、ますます好きになりました。

 

 この劇場を建てた興行師ガブリエル・アストリュクはこのために破産したのですが、装飾のみならずこの音響は様々なこだわりもその背景にあるのかもしれないと思ったり…。

 破産しても100年後も美しい劇場を造ったのだから本当に素晴らしい事。

またこの劇場を訪れたい、できれば彼の演奏でと思いました。帰ってからもその日に会場で買い求めた2枚の彼の演奏ばかり聞いています。

 SIMON GRAICHYはメキシコ、レバノンオリジンだそうですが、今年のニューイヤー・コンサート指揮も素晴らしかったグスターボ・ドゥダメルといい音楽は南米オリジンが熱いのかもしれません。

 

曲をダウンロードもできるサイト:https://simonghraichy.com/

第45回香港藝術節~HONG KONG ARTS FESTIVAL~

『ラ・バヤデール』は5回公演、内3回を見ました。

『トリアディック・バレエ』は同時上演されたリチャード・シーガル振付の『ePreludes』はまた見たい作品。

『スーパー・プール』会場で、後ろのビルの照明もマッチして、ここがベストポジション!と撮ってくださいました。

 今年も香港芸術フェスティヴァルが開催されています。

日本からはピナ・バウシュを目当てに行かれるかたも多いと聞いています。

 

 私はミュンヘン・バレエを見に行きました。演目は『ラ・バヤデール』(毛利臣男衣裳)と『ミックス・ビル』。『ミックス・ビル』の『トリアディック・バレエ』には注目が集まりました。私は2014年のミュンヘンでの公演を見に行ったのですが、やはりもう一度見たいと思って足を運びました。3泊4日で6公演にバックステージツアーやワークショップ見学はなかなかハードでしたが充実した時間でした。

 また改めて記事としてお伝えできたらと思います。

『トリアディック・バレエ』についてはミュンヘンと香港の観客の反応の違いはこれほどか、と驚いたことだけ付け加えておきます。

 

 今回のフェスティヴァルは45回目ということでスペシャル・イヴェントとして「スーパー・プール」も開催されていました。Jen Lewin Studioが手がけているもので、2014年から世界各国で展開中。

光を遊ぶ、という趣のイヴェントですが、香港ならではの夜景も映え、想像以上に楽しいものでした。「自分のアートの一部になる」、「移動する」、「場を変えて成立可能」というのもコンセプトだそうで、今回の香港も数日毎に移動するとの事で、私は灣仔で体験しました。 これは日本でも人気がでそうだな、と思いました。

 フェスティヴァル開催を知らなくても、デートにあるいは子供を連れてファミリーでと、様々な楽しみ方のできるこうしたイヴェントはいいなと感じました。皆さんが年齢問わずとても楽しそうだったのが印象的でした。

 

 次は今更、と言われそうですが、3月に閉幕する『バレエ・リュスからオートクチュール』展を見にパリに飛びます。バレエはもちろん、オペラや音楽会、展覧会も楽しみが沢山。そして調査も前進できたらと思います。こちらは小さな石を積み上げる、時に砂漠で砂を探す作業ですけれど…。

新年1本目は横浜赤レンガ、そして横浜ダンス・コレクション開幕!~『JUDA, CHRIST WITH SOY』/『VESSEL yokohama』@横浜赤レンガ倉庫第一号館

ポスタービジュアルも印象的な『JUDA, CHRIST WITH SOY』

初日乾杯。左からエラ・ホチルド氏、森山未來氏、小野慎司プロデューサー

スポットライトも消えた後なので暗いのですが、頭が見えない独特の姿の「ヘッドレス」の姿が印象的。

 2017年1本目は横浜赤レンガの『JUDA, CHRIST WITH SOY』でした。

エラ・ホチルド氏、森山未來氏による作品。イスラエル、愛媛で上演された作品ですが私は初見でした。

会場、照明、音楽、ダンスがぴたっとあった気持のいい舞台。森山未來氏は「踊りもプロフェッショナル並の役者」から本当にダンサー、として舞台に上がったという印象。身体がこれまでと違いました。

 太宰の『駆け込み訴え』に想を得たといいますが、本当に背景を流れる感じとの森山氏の言葉通り、物語を追うというよりは感情、関係を追うという作品でした。

 

 同会場で横浜ダンス・コレクションの幕開け作品として26日に初演された『VESSEL yokohama』にも森山氏が出演。

こちらも圧倒的な魅力を放った作品でした。客席も美術業界から豪華な顔ぶれが並んでいたのも印象的。名和晃平氏とのコラボレーション作品ということで通常のダンス業界の観客だけではない客層にアピールしたということのようです。こうした事はとても重要。「~業界」という小さな枠の中では限界が次々出てきてしまいますから…。

 ダンスも時々手掛けている原摩利彦氏の音楽も見事でした。空気感を醸し出すことができる音楽家だといつも感じます。

 

 初日乾杯で小野プロデューサーが「会場の外から聞こえた船の汽笛がこれから始まるこの作品の船出の合図に聞こえた」(メモを取っていないので意味だけおとり下さい)という言葉に大いにうなずきました。世界でも通用する強度のある作品でした。

 ダミアン・ジャレの振付による頭を見せない身体でほぼ全編踊られる作品で身体は「クリーチャー」となり、目が離せませんでした。舞台美術も素材は企業秘密とも聞きますが、とろりと肌に乗って落ちると白い被膜のように見える質感が身体の存在をさらに引き立たせていました。

 最後の場面については意見が分かれる部分もあるそうですが、私は此の時代に最初細胞のように見える美術の中から生まれその中に戻って行く、というイメージが浮かびました。

 美しく、見応えのある素晴らしい作品でした。

今年は幸先がいい感じです。

そして、2月19日まで続く横浜ダンス・コレクション、どんな作品、ダンサーに出会えるでしょうか。

2016年のお話~個人的ステージベスト3~

『忘れろボレロ』舞台上には巨大な×。何故でしょう?

DDDの劇場へのアプローチ

『ルーツ』は見応え十分

はめる勇気はありませんでしたが顔ハメパネルも

一つずつ手作りのキーホルダー、かわいい!

2016年はこれ!という舞台を逃した傾向があったかもしれません。ノイマイヤー・ガラの評判を聞くと見られなくて残念…とか。

 

そんなですが、舞台色々からは下記の通り。

 

  1. 『忘れろボレロ』@DDD
  2. 『横浜ダンスフェスティヴァル2016』@神奈川県民ホール
  3. 『ルーツ』@KAAT

 

最近見る度に面白いな、と思うダンサーの一人が大植真太郎氏。

ものすごく動ける器用な身体で徹底的に遊んで見せる感じが突き抜けていて面白いのです。笑いの要素もあり、観客層が若いという印象もありますが、それも納得の面白さと実はすごいことをやっている身体の面白さに惹きつけられます。『談ス』も面白かったです!

 

横浜ダンスフェスティヴァルは既にこちらで取り上げていますが、作品ラインナップがとても工夫されていて、かつ高いクオリティだったのが印象に残っています。バレエしか見たことがないと思しき観客が帰途、見たことがないけれど面白かったと会話しているのが聞こえ、遠藤康行さんの意図がきちんと伝わっているのだなと感じました。

私は実はあまりガラ公演に強い関心を持てない事が多く、こちらも当日やっぱり見ようと思って行ったのですが、友人を誘えば良かったと思いました。

ガラがあまり好きではないというのは、「福袋」的な面白さは確かにありますし、そこでしか見られないパートナーや作品の面白さはあるのですが、表現としてできれば一つの作品を踊る姿の方をより見たい、と思ってしまうからです。

もちろん最近では小作品を踊りきるということありますが、一部を上演する場合どうしてもガラ向きの表現になるのが少し残念に感じられてしまうのです。

ちなみにトリプルビル、ダブルビルは好きですし、もう少し色々上演されたらいいのに、と思っています。現実的には全幕に比べて日本ではまだどうしても集客が厳しいそうで、その点も残念だと思っています。

 

年末間際に見た『ルーツ』は何とも色々考えさせられる公演となりました。

時代のカナリア的な存在として言葉を扱う演劇の方が表現しやすいのかな、とも思いました。まるで第一次世界大戦前のような空気が世界を覆う中にあって生まれ、印象に残る作品になったのではないかなと思います。

出演者のインフルエンザのための公演中止(楽は上演)は何とも残念、関係者の無念さを思うと言葉が出ません。

でも感染症とても増えています。色々大変な世の中になったのだと、改めて思います。

 

その他、ミラノ・スカラ座もカンパニーとしての魅力あふれる舞台でしたし、踊り続けるプロジェクト大山も「働く女性」としてのダンサーについても思いを巡らせた舞台となりました。(公演後のトークでそうした話題が出たものですから。)