『談ス』~誰にでも楽しめる“ダンス”~

キレッキレのダンサー達が身体で真剣に「遊んで」見せる。

観客はその姿に引き込まれ、そしてその姿を「楽しむ」。

 

なんて少しだけ恰好付けて書く事もなく、楽しい!というダンス作品だと思います。大植真太郎氏、森山未來氏、平原慎太郎氏の三人のダンサーによるパワフルな舞台。

バレエの観客でもあまりダンスは見ないという方でも見て、わぁ、と思ったり楽しんだりできる作品です。でも実は…という。

ヒントは「談ス」というタイトルにあるのかな。

舞台はライブがやはり一番ですので、是非足を運んで見て下さい。

 

ダンスにしては珍しい日本の長いツアーも話題です。

その初日があまりコンテンポラリー・ダンス公演には使われない鎌倉芸術館でしたので足を運びましたが、行ったかいのある何とも楽しい時間でした。先月はスウェーデン公演をしていた作品ですが、あちらの観客も個性的だったようです。

あなたの町にもやってくるかも。

 

『談ス』特設サイト:

http://dansu2016.com/

2月は舞台が盛りだくさん。ジャンルも様々!

『白鳥の湖』はよこすか劇術劇場で見ました。

仮設テントはタマネギ屋根。

場内撮影は禁止。パネルはトーテム尽くし。

東京バレエ団、『白鳥の湖』

秋元康臣さんは10代から輝くような才能を発揮していたダンサーでNBAバレエ団、K Ballet、ロシアで活躍後帰国。昨年のバレエ団入団は驚かされたニュースでした。

東京バレエ団入団後初主演の『白鳥の湖』は是非に、と出かけました。

高くて伸びのあるジャンプといった従来の魅力に加えて表現力、サポート力がより磨かれた印象。今後はより演劇的な作品でも見てみたいと思うダンサーです。ブルメイステル版では準主役級に活躍する道化には昨年新国立劇場バレエ研修所を卒業された山本達史さんが大きな踊りに加え達者な演技で舞台を盛り上げていました。

東京公演が他の公演と重なり行かれなかったのでとても久しぶりに横須賀の芸術劇場に足を運びましたが、そうした方も多かったのかメディア関係者含め都内劇場で見る顔ぶれも沢山見かけました。

 

宝塚、月組公演『舞音』/『GOLDEN JAZZ』

『マノン』をベースにした作品ですが舞台は植民地時代のベトナムに移され、独立運動を繰り広げる中の二人の恋物語。振付は元ハンブルク・バレエ団の大石裕香さんが手がけられ、作・演出の植田景子さんはノイマイヤーの元へ留学した時期もあり、今回の作品にも「ノイヤマイヤー的」な雰囲気が随所に感じられました。とはいえ、宝塚らしさは健在で映画『インドシナ』(私も大好きな映画です)のムードも漂う、壮大な愛の物語でした。幕切れの美しさも宝塚らしいと感じました。

『GOLDEN JAZZ』は観客が自前のタンバリンを打つ姿に圧倒されました。こういう楽しみ方もあるのですね! キラキラとした宝塚ならではの時間でした。

 

ロベルト・ルパージュ演出、シルク・ドゥ・ソレイユ『トーテム』

ルパージュ演出のシルク・ド・ソレイユ2作品目。「人類の進化をテーマとした」大人向けテーマを内包するショーではありながら、飽きさせない演出の「シルク」でした。生演奏の魅力と随所にちりばめられた超絶技巧に目を奪われます。満員の客席を大いに沸かせました。

 

 

素敵な青空の下、『ウェストサイド物語』と『ライオン・キング』が同時上演で熱気一杯。

劇団四季、『ウェストサイド物語』

新演出が話題の『ウェストサイド物語』が開幕しました。もしかしたら私が初めてみたミュージカル映画は『ウェストサイド物語』かもしれません。(『サウンド・オヴ・ミュージック』の可能性もありますが)いずれにしろ誰もが知るミュージカル作品。

その新演出ということで期待して出かけました。迫力のある舞台。民族間、社会的弱者同士の対立に置き換えられた『ロメオとジュリエット』は今の日本でも哀しいですがリアリティがあるように思います。帰り道の観客からも「なんか色々考えちゃうね」という声も聞こえました。一方でバーンスタインによる音楽は圧倒的、今も耳の中で「Tonight」が鳴っています。

 

 

夜景も美しい赤レンガに輝くダンス・コレクション案内

横浜ダンスコレクション2016、日本・フィンランドダブルビル:『CHIMERA』『This is the title』

1月23日から横浜赤レンガ倉庫で断続的に開催されてきた横浜ダンスコレクション2016も2月14日『日本・フィンランドダブルビル』で幕を下ろしました。

今年のコンペティションは2日間しか行かれず、受賞発表はTwitterで知りました。コンペティションIは見た日の多くが受賞していました。審査員賞Aokid×橋本匠『フリフリ』、若手振付家のための在日フランス大使館賞受賞浜田純平『Convey』、Touchpoint Art Foundation賞とMASDANZA賞受賞は渡辺はるか『グランドフィナーレ』。翌日のコンペティション出演の奨励賞受賞の伊東歌織『四角形のゆううつ』はどんな作品だったのか気になります…。

長谷川達也率いるDazzle新作『CHIMERA』はコンテンポラリー・ダンスでは少ない群舞の見せ方が巧みな振付。圧倒的なコアがあったら完璧かも、と思いました。

来週はNoism『カルメン』の再演、月末には『エトワールへの道程2016』など、短い2月もまだまだ舞台は続きます。

さいたま芸術劇場で『DUST』

初日楽屋乾杯でアヴシャロム・ポラック氏と。 
Photo:Emi Hiruta

公演が多くて見きれない1~2月ですが、そんな中、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック・カンパニーの『DUST』をさいたま芸術劇場で見てきました。作品が完成してから付けられたタイトル『DUST』にはすべては塵になる、一方で塵はつもれば何かになる…という意味もあるそう。(ポラック氏談)日本人が見るとつい地震や津波を連載してしまう幕開きですが、もちろんイメージはそれだけに限定されることはなく広がっていきます。このカンパニーらしい醍醐味の豊かさ、多層性を感じさせる作品でした。

2001年に『オイスター』で初来日以来見続けているカンパニーですが、『オイスター』に次いで好きな作品でもありました。

横浜では、恒例となったダンス・コレクション(~2月14日まで)も開幕していますし、週末には白井剛×中川賢一×堀井哲史という豪華顔ぶれによる『ON-MUYAKU2016』も上演されました。白井氏のこれまでにないダンサーとしての存在感が印象に残りました。今週末には新国立劇場『ラ・シルフィード』も開幕しますし、身体がいくつもあればいいのに、と感じる公演の多さです。

2015年のお話~個人的映画ベスト3~

ライヴ・ビューイング含め、バレエ映画の公開も例年より多い年でした。近年増えていますが、バレエやバレエ公演への入り口になればいいなと思っています。『ボリショイ・バビロン』は公開中に人事が発表されるなど映画の続きが現実で…というリアルもありましたし、話題の多い年だったように思います。

そんなバレエ映画も見たものの、今年の極私的なベストは以下の3本です。

1.『パリよ永遠に』(原題:DIPLOMATIE) 監督:フォルカー・シュレンドルフ、仏・独、2014年(日本公開2015年)

舞台のほとんどが現在もパリ屈指の高級ホテルとして知られるホテル・ムーリスの室内。パリの徹底的な爆破と破壊を命じられたドイツ軍防衛司令官コルティッツとパリで生まれ育ったスウェーデン領事館ノルドリンクのやり取りが中心ですが、それぞれの立場、言葉、心の駆け引き、どれもが観客を惹きつけ、全く飽きさせません。ウィットに富み、時に皮肉を言い合いながら妥結点を見出すという「外交」の原点のような会話。

 舞台をベースにした作品だそうです。原題の外交官の方が内容に即しているように思いますが、邦題には「パリ」なのかしら、と思ったり…。

外交、というのはどういうことなのか、外交のあるべき姿をみたような清々しい気持ちになる一本でした。知識、文化、知恵、といったものを駆使して行われる国同士でありながら個人対個人にもなりうる「外交」が時代の変化の問題ではなく、人材という点でも現在の日本との他国ではもはや臨むべくもないという現実には情けないばかりですが…。

エンド・ロールで流れたジョゼフィン・ベーカーも印象的でした。彼女をデビューさせたのがバレエ・スエドワ主宰者だったスウェーデン貴族ロルフ・ド・マレ、というのはもっと知られて欲しいなとも思いつつ。

2.『パレードへようこそ』(原題:PRIDE)監督:マシュー・ワーカス、英国、2014年(日本公開2015年)

バレエ映画としてヒットした『リトル・ダンサー』も実は舞台の半分は炭坑で、炭鉱夫のデモの画面が沢山ありました。同じ時代の炭坑夫の戦いをゲイが支え、最初は戸惑いつつも共に手を取り合って戦っていくという姿が描かれた一本です。未だLGBTとの共闘の可能性が極めて低い日本から見ると信じられないような気持ちになりますが、英国のある種のリアリティのある美しいストーリーです。

ちなみに映画『リトル・ダンサー』のミュージカル版『ビリー・エリオット』は来年日本公演予定。ミュージカル版を改めてライブ・ビューイングで見ましたが、ロンドンでは聞き取れなかったディテールが分かって興味深い点がありました。

3.『GONIN サーガ』監督:石井隆、日本、2015年

たまたま深夜番組でこの映画の第1弾が放映されていて、見始めたら止まらなくなりました。その後の監督インタビューで、最近は原作がある映画が多いが、自分は映画でしかできない映画を撮りたいと、それができている幸せな監督だと自覚しているという要旨の発言をなさっていて、俄然興味がわき、見に行きました。

出張先神戸でしたので、山口組分裂抗争最中でもあり、その筋のような方もちらほらと…という臨場感のある劇場で楽しみました。

任侠物とくくってはいけないでしょうけれど、歌舞伎の忠臣蔵からつながる、仁義で生きる人達の熱さは見ていて納得させられるものがあります。「絆」より「仁義」かな、という…。世代を経て因縁、まさにサーガという映画。まだ続編を期待したくなります。

2015年のお話~個人的ステージベスト3~

ローマ歌劇場楽屋通路にて

ローマ歌劇場正面、中央ポスター2枚がナイチンゲール

1.ローマ歌劇場バレエ団『ナイチンゲールの歌』、ローマ歌劇場

「幻」のバレエ・リュス作品が上演されると聞いてかなりの強行軍でローマまで見に行きました。「幻」というのは、ディアギレフが依頼し、美術・衣裳デザインが完成したにも関わらず上演されなかったからです。(実際に上演されたのはその後アンリ・マティスに依頼し直されたのもの)

未来派の画家の一人だったフォルトゥルナート・デペーロによる衣裳は「ナイチンゲール」以外は造形物といった方がいいような形のものばかり。デペーロ・デザインは上演されたことがないので、マティス・デザインで上演された際のレオニード・マシーン振付によるものでした。デペーロ・デザインで上演されていたら振付も違うものになっていたと思いますので、フェアな見方ではないかもしれませんが、今回の舞台を見て、ディアギレフがデペーロ・デザインを採用しなかった理由の一端がわかったような気がしました。つまり、デペーロ・デザインを不採用としたのは、ディアギレフが想像以上に「ダンス」を踊る「身体」というものを大切にしていたからではないかと感じたのです。

やはり、資料だけでは分からない事は沢山あるものです。研究というのは手間がかかっても「現場へ行く」というが欠かせないと改めて思いました。

同時上演された、『カルミナ・ブラーナ』は正直なところ特に期待していなかったのですが、素晴らしい作品でした。エマニュエル・ウンガロのデザインのオシャレな衣裳は舞台衣装として素敵なだけでなく、着てみたいと思うものも…。初日カーテンコールでは82歳になるご本人も晴れやかな顔で登場しました。ローマ歌劇場の芸術監督でベルギー人の父を持つミシャ・ヴァン・ホッケのスタイリッシュでパワフルな振付と相まって忘れられない『カルミナ・ブラーナ』になりました。ちなみに、ホッケはバレエ・リュスの重要なダンサーの一人オルガ・プレオブラジェンスカヤに学び、プティ、ベジャールの元で踊った後、ムードラの芸術監督も務めたという20世紀バレエ史を体現するような人物です。

ローマ滞在は短いながらも、この他にフォルトゥナート・デペーロ展に加え、思いがけなく会期延期されていたカラヴァッジョ展も見ることができる幸運に恵まれました。研究の面から意義深い旅だっただけでなく、プンタレッラの時期でもあり、美味しいお食事ももちろん楽しみました。

2.坂東玉三郎『壇浦兜軍記 阿古屋』、歌舞伎座

初めて見た歌舞伎は、父に連れて行ってもらった「タマタカ」の『仮名手本忠臣蔵』お軽勘平でした。藤色の着物の玉三郎のあでやかさ、巻物の手紙を手繰る手つき、今でも鮮明に思い出せるほどです。もう演じないとも言っていたような気がする『阿古屋』を上演すると聞いて、見に行きました。バレエと違い年齢を重ねた芸の深淵も魅力的な歌舞伎。個人的には「眼福」と言うほかないと、出てきた時につい「ほぉ~」とため息が出るのも納得できる美しい姿でした。私は歌舞伎は素人ですから、楽しみとして、また個人的な贔屓も強いとは思いますが、いいものを見ました。新春の坂東玉三郎は『郭文章 吉田屋』の「夕霧」、と大役続きです。こちらも楽までに是非見に行きたいと思っています…。

3.ボヴェ太郎『寂寥の薫-能≪楊貴妃≫』、京都文化博物館別館ホール

トヨタ・コレオグラフィー・アワードに出場された頃からほとんどの公演を追いかけてみているダンサー・振付家。抑制され、そぎ落とされた動きながら、空間を“ぐわん”と動かし、時にかき回すような独特の身体は他に例がないと感じています。

それゆえに次作への期待も大きくなってしまうにも関わらず、ほぼ毎回その期待を上回るすごさがあります。最近はより難しい、使いこなしにくい会場を舞台にする傾向があるかもしれません。

 

今回は京都文化博物館別館、国立指定重要文化財だそうですが煉瓦のホールが会場でした。そこで響く能楽は能楽堂とは全く違う、ロック、ともいえるような力のあるもの。その中で舞う肉体は時にあでやか、そして時に悲痛、とあっという間の時間でした。(ダンスというよりもご本人も使われていますが「舞う」と言う言葉がしっくりきます)今後の活動もとても楽しみです。

東京公演が少ないと言う声も聞きますが、遠くまででも見に行く価値があるでしょう。関西公演がほとんどなので、「京の都」を楽しむこともできますし…。

 

ボヴェ太郎ウェブサイト:http://tarobove.com/

 

2015年のお話~個人的展覧会ベスト3~

 少し遅ればせですが、2015年のお話も…。

 

 昨年も沢山の展覧会を見ました。中でもこれは良かったな、と記憶に鮮やかに残るのは下記の展覧会でしょうか。

グエルチーノ展、インパクトある入口パネル

1.よみがえる バロックの画家、グエルチーノ展

2015年3月3日~5月31日 国立西洋美術館

チェントの地震がなかったら実現しなかったであろう展覧会、と考えると微妙な心持はするものの、日本でこれだけの大作、名作を見ることができるのはなかなかない事で何とも贅沢な展覧会でした。グエルチーノが直接学んだわけではありませんが、画業においては「師」と言えるカラッチの作品も合わせて見られるというのも素晴らしかったです。キャプションも文字数は多めでしたが、なるほどと思える点が多かったのも印象に残りました。宮下喜久朗氏の講演も学ぶところの多い充実した内容でした。私としては珍しく2回も足を運んだ展覧会でした。

同時代の画家で大好きな一人、カラヴァッジョの大規模な展覧会が2016年開催されるのも今から楽しみです。

芸術大学展示のお知らせパネル、出品作品が一部掲載されています

2.藤田嗣治展覧2つ

≪舞踏会の前≫修復披露展 2015月12月1日~6日、東京芸術大学美術館展示室2 

MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示 2015年9月19日~12月13日 東京国立近代美術館

 

共に近年ようやく日本で再評価の進む藤田嗣治の展覧会です。

前者は大変会期が短かったのですが、修復された作品の美しさだけではなく、修復についての解説も興味深いものでした。また、卒業作品や1930年代のノートは藤田の生活や人柄をしのばせる生々しい記録として印象的でした。ノートの中に1920年代藤田嗣治のバレエに関わる仕事についての一文を求めて調査しに伺いたいと思っています。

 

後者は初めての一斉全点展示。訪れたタイミングが良かったのかもしれませんが、想像していた混雑はなくゆっくり見ることができました。今までは1920年代の藤田作品を中心に見てきたので、未だ論議の中にある戦争画やメキシコ時代の絵画などもっと知りたいと思う時代の作品の展示を見ることができたのも楽しい事でした。藤田嗣治の作品への舞台芸術の仕事の影響は見逃せないのではないかと思っていますが、なかなか検証するに至っていません。

111点は修復済との事ですが、状態の悪い展示作品もあり、これまでの藤田嗣治の国内での評価を反映しているようにも思えて複雑な心境にもなりました。

*今年は映画『FOUJITA』も公開されました。2014年のフランス滞在時に同映画プロデューサーたちと一緒にしたディナーでお話を伺い、楽しみにしていた公開でした。 

ポスター、チケットは歌麿でした。画面構成力・デザイン力は今でも通用する新鮮さ

3.春画展 2015年9月12日~23日、永青文庫

大英博物館での開催大成功を受けて、日本でもさすがにどこかが開催するだろうと思っていたのですが、2年の月日を経てようやく開催。他の国公立系での実現不能と聞いて色々がっかりとし、また呆れもしました。今回の実現は細川家当主、永青文庫理事長細川護熙氏の英断によるもの。大きな拍手を送りたいと思った方も多かったと思いますが、私もその一人です。

初めてこれだけの点数をまとめて見て圧倒されながらも豊かな性の世界を楽しんだ日本の先人達の思いや視線、技術を堪能することができました。専門の方には当然なのかもしれませんが、着物の「空擦り」の精密さや美しさ、そして今更ですが写楽の圧倒的な画面構成力に目が惹きつけられました。

明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

世界は不穏な空気が漂っていますが、平和な年であってほしいと祈るような気持ちで迎えた新年です。

今年は日本で新年を迎えておりますが、忘れられない新年がいくつかあります。

一つはユーロ導入の年のパリ。当時、フランスではユーロ導入に対しては定着するのか半信半疑と言った受け止められ方で、一部ではユーロマークを灯すイヴェントも行われていたものの、基本的には淡々とその日を迎えていました。

とはいうもの新しいお札を手にしてみたかった私は、年明けを待っていそいそと換金しに行ったのです。ところが、何と…ユーロ紙幣はまだない、と結局フランになってしまったのを覚えています。

もうほとんどの人が忘れているかもしれませんが、当時ユーロとフランの換算だけをしてくれる電卓が沢山売られていました。大活躍した電卓でした。

例えば八百屋さんでフルーツを買うと、こちらはフランで払っているのにおつりはユーロ、あるいは逆ということが起こるため、どちらの通貨かを選んで数字を押せばいいだけの小さな電卓はお店では大活躍したのです。

 

それで思い出した事があります。

年明け、いつものように古書市に向かいました。私はユーロとフランを両方持っていたのですが、まだユーロの手持ちが少なかったのです。ですがちょっと使って見たい、そう思って最初にお店がフランで行った金額をまずユーロに換算してもらいました。ところが案外な数字に…そこでやっぱりフランで払うわ、というと端数の関係なのでしょう、最初のフランの金額より安くなってしまったのです。

お店の方も承知でしたが、笑って、「これがユーロマジックかも」なんて言ってその価格で売ってくれました。そんなおおらかなのも市の面白さの一つでしょう。

古書店や骨董市での思いがけないやりとりや、思い出に残るお話などまたこちらでご紹介していかれればと思っています。

クリスマス・シーズンの終わり…。

ロビーのツリーの前では記念写真を撮る人が沢山

 今年の『くるみ割り人形』ラッシュも終わりを迎えました。私の2016年ラストは新国立劇場でした。昨年まで生徒さんだった木村優里さんがプリンシパルとして「金平糖の精」で大役をエレガントに果たされていました。「クララ」も似合いそう、と思いつつ楽しみました。

 

『くるみ割り人形』の会場はどこもいつもより華やか、クリスマスツリーは定番、ねずみがロビーに出てきたり、子供たちにお菓子を配ったり…。おめかしした子供たちの姿もほほえましいものです。

KBallet幕間のクッキー付きキャラメルティー

KBalletと東京シティ・バレエ団の「くるみ割り人形」プログラム
クリスマスらしさが一杯です。

 KBalletさんのビュッフェではキャラメルティーにかわいいジンジャーマンのクッキーが添えられていました。Kballet版はホフマンの原作を重視した物語も見応えのある演出で大人っぽい感じ。版による違いも楽しみの一つです。

 市民でバレエを支える活動が生んだ東京シティ・バレエ団は子供たちが沢山出演しながらもオーソドックスなバージョンですが、今年で30周年だそう。日本のバレエの在り方の一つとして一観客として応援している活動です。こちらも地域のお菓子屋さんが会場に多数出展、美味しくてかわいいクリスマスのお菓子が買えるのも楽しみの一つ。こういう季節感も嬉しいですね☆

 

FUTARI de ZUCCUでは客席にこんなプレゼンテーション。紙飛行機の手紙も靴も作品でも大きな役割が♪

毎年恒例のクリスマスクッキー、製作中…

 コンテンポラリーダンスでもクリスマスの空気のある公演がありました。『FUTARI de ZUCCU』、コンドルズの藤田善宏氏とタップダンスの村多正樹氏という異色の組み合わせ。池袋のダンスではあまり使わないスペース空洞という会場を横長に使っていました。サンタクロースにかけた子供の願いを叶える童話風のストーリーながら、願いをかなえる代わりに代償も払わなくてはいけないという厳しい結末…。それでいながら心もほっこり温まる作品でした。(会場のクリスマスデコレーションも素敵だったのですが写真を撮りわすれてしまいました。)

 会場には親子席も設けられ、親子でも楽しめる、でも子供に寄り添って簡単にしすぎたりはしない、という姿勢も好感が持てます。タップとのバランスも絶妙で「二人」でやる意義が大きかった点でも、今年のコンテンポラリーダンス公演の中でも私にはとても印象に残る良い作品でした。このCAT-A-TAC二人会は11月の『未亡人』も面白かったので、今後も楽しみ♪

 来年はどんな舞台に出会えるでしょうか。

そろそろ『くるみ割り人形』

初めて買ってもらったカラヤン指揮の『くるみ割り人形』LP。今見ると王子のコスチュームが『パラード』のレオタードに見えてしまいます。

2015年冬の初『くるみ割り人形』は井上バレエ公演でした。いよいよクリスマス・シーズンです。井上バレエ団『くるみ割り人形』プログラム

12月は『くるみ割り人形』の季節です。バレエの舞台自体がクリスマスの夜なので、当然のことかもしれません。都内近郊だけでも毎年少なくとも7,8本程度の『くるみ割り人形』を見ることができます。日本全国ですともっと沢山ありますが…。

それぞれの演出の違いを見るのも楽しいですし、カンパニーによっては幕間にダンサーがロビーでお菓子を配ったり、観客との写真撮影に応じたり、また、客席に向かって最後に小さな袋に入ったお菓子を投げたり、いつもと違う「フェスティヴ=お祭り的な」ムードが漂います。
『瀕死の白鳥』を当たり役とした20世紀最高のダンサーの一人、アンナ・パヴロワが初めて見たのバレエも『くるみ割り人形』だったと伝えられていますが、バレエを志す人達や、バレエ関係者でも初めての作品だったという方も多いかもしれません。

私も初めてあぁ、バレエってすごい!と思ったのは子供時代にベルギーでその日だけTV放映されていた『くるみ割り人形』でした。そして初めて父にねだって買ってもらったLPも『くるみ割り人形』でした。当時帝王カラヤン全盛時代で子供でもその名前をしっているほどでした…。
繰り返し聞いたことをよく覚えています。中でも「花のワルツ」の音楽に響きは想像の世界を膨らませてくれました。VTRはまだない時代でしたから、音楽を聞きながら、頭の中でバレエのシーンを再現していたのも懐かしい思い出です。
さて、今年はどんな『くるみ割り人形』に出会えるでしょうか…。