今回の渡仏の公演で一番心に残ったのがSIMON GHRAICHY のリサイタルでした。
会場は、『春の祭典』100周年上演の記憶もまだそう古くはないシャンゼリゼ劇場。
バレエ、ダンスがない日にリサイタルがあったので、当日になってふらりと出かけました。
これがびっくりするほど煌めきのある演奏だったのです。
ピアノ好きの方、音楽好きの方には日本でも知られている人なのかもしれませんが、私は不勉強にして知らなかったので驚きました。出てくるだけで歓声が上がっていましたし、後で気付きましたが、地下鉄には多くのポスターが貼られていましたから話題の公演だったのかもしれません。
1曲目のアルトゥロ・マルケスから小さな美しいきらびやかな打ち上げ花火のように頭の中(なのか目の前なのか…)ではじけ続ける感じの音。ずっと聞いていたいと思ってしまいました。
演奏曲は9曲、ドビュッシー、ファリャといったバレエ・リュスでも同じの面々も、またリスト、アルベニス等多彩。オリジンであるメキシコの作曲家マニュエル・マリア・ポンセ、や南米の作曲家ルネスト・レクオーナ、エイトル・ヴィラ・ロボス、カマルゴ・グアルニエリといった様々な表情の曲を独自のカラーで弾きこなすピアニスト。
アンコールには何と新譜CD『SIMON GHRAICHY HERITAGES』で世界初演というパーカショニストとの演奏で、CDと曲順構成が同じというちょっとしゃれた演出。これがまた面白くて、そういえばピアノは打楽器、打楽器同士なのに、こんなに違う、そしてある点で共通…とわくわくする気持ちで聞きました。
当日でしたし、あまりいいお席を取れなかったのですが、これもまたいい経験になりました。この劇場はどこの席でも本当に音が良い事を実感したのです!
シャンデリアも近くで見られましたし、劇場上部の装飾や階によって違う扉の装飾も楽しめました。劇場は色々な席で見ると違った楽しさがありますね。(バレエ、ダンスはやはり正面を取ってしまうので知らなかったのです。)
アールデコの粋を集めたこの美しい劇場、ますます好きになりました。
この劇場を建てた興行師ガブリエル・アストリュクはこのために破産したのですが、装飾のみならずこの音響は様々なこだわりもその背景にあるのかもしれないと思ったり…。
破産しても100年後も美しい劇場を造ったのだから本当に素晴らしい事。
またこの劇場を訪れたい、できれば彼の演奏でと思いました。帰ってからもその日に会場で買い求めた2枚の彼の演奏ばかり聞いています。
SIMON GRAICHYはメキシコ、レバノンオリジンだそうですが、今年のニューイヤー・コンサート指揮も素晴らしかったグスターボ・ドゥダメルといい音楽は南米オリジンが熱いのかもしれません。
曲をダウンロードもできるサイト:https://simonghraichy.com/