コンペティションII 新人振付家部門@横浜赤レンガ倉庫1号館2Fスペース 2017年2月9日、10日

今回は残念ながら他の仕事の関係でコンペティションは見られず…。荒氏は注目のダンサーだと思いますが…。

風情ある赤レンガ倉庫。この中で熱戦が…

Yokohama Dance Collectionも中盤になってきました。見た事のない新人にも出会えるコンペティションIIを2日間見ました。25歳以下、36名の中から映像・書類審査を経て選ばれた12名の振付家による作品。

 

雪もちらつく中の開催。1日目は電車が遅れて1本目の横山八枝子氏の作品は見ることができませんでした。その他11本を楽しみました。

 

見られなかったものがあると「良かった」と聞いてとても悔しくなるものですね…。

 

審査結果は出ていませんが、1日目の永田桃子『Brain in a vat』は衣裳のイメージなどが細やかで、世界観がはっきりとしていました。また振付の中の様々な質感のある動きが私には心地良く、あっという間の10分でもっと見ていたい、見てみたいと思いました。

2日目は下島礼紗『オムツをはいたサル』は“キワモノ”と言ってもいい作品だと思いますが、チャレンジングな作品であったことは確かです。久しぶりに聞いた麻原彰晃ソングはなかなか衝撃的でした。久保田舞『草みちでのくだる会話』は会場の柱を巧く使ったり、光の演出を多用するなど工夫が見られました。

10分という時間でどこまで見せられるか、どう見せるか、色々なチャレンジが見られました。

授賞の発表は12日19:00。選ばれるのは誰になるのでしょうか。

 

審査員は伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団・振付家・演出家・ダンサー)、ヴィヴィアン佐藤(美術家)、柴幸男(劇作家・演出家/ままごと主宰)、浜野文雄(新書館「ダンスマガジン」編集委員)。彼らの判断が楽しみです。

新年1本目は横浜赤レンガ、そして横浜ダンス・コレクション開幕!~『JUDA, CHRIST WITH SOY』/『VESSEL yokohama』@横浜赤レンガ倉庫第一号館

ポスタービジュアルも印象的な『JUDA, CHRIST WITH SOY』

初日乾杯。左からエラ・ホチルド氏、森山未來氏、小野慎司プロデューサー

スポットライトも消えた後なので暗いのですが、頭が見えない独特の姿の「ヘッドレス」の姿が印象的。

 2017年1本目は横浜赤レンガの『JUDA, CHRIST WITH SOY』でした。

エラ・ホチルド氏、森山未來氏による作品。イスラエル、愛媛で上演された作品ですが私は初見でした。

会場、照明、音楽、ダンスがぴたっとあった気持のいい舞台。森山未來氏は「踊りもプロフェッショナル並の役者」から本当にダンサー、として舞台に上がったという印象。身体がこれまでと違いました。

 太宰の『駆け込み訴え』に想を得たといいますが、本当に背景を流れる感じとの森山氏の言葉通り、物語を追うというよりは感情、関係を追うという作品でした。

 

 同会場で横浜ダンス・コレクションの幕開け作品として26日に初演された『VESSEL yokohama』にも森山氏が出演。

こちらも圧倒的な魅力を放った作品でした。客席も美術業界から豪華な顔ぶれが並んでいたのも印象的。名和晃平氏とのコラボレーション作品ということで通常のダンス業界の観客だけではない客層にアピールしたということのようです。こうした事はとても重要。「~業界」という小さな枠の中では限界が次々出てきてしまいますから…。

 ダンスも時々手掛けている原摩利彦氏の音楽も見事でした。空気感を醸し出すことができる音楽家だといつも感じます。

 

 初日乾杯で小野プロデューサーが「会場の外から聞こえた船の汽笛がこれから始まるこの作品の船出の合図に聞こえた」(メモを取っていないので意味だけおとり下さい)という言葉に大いにうなずきました。世界でも通用する強度のある作品でした。

 ダミアン・ジャレの振付による頭を見せない身体でほぼ全編踊られる作品で身体は「クリーチャー」となり、目が離せませんでした。舞台美術も素材は企業秘密とも聞きますが、とろりと肌に乗って落ちると白い被膜のように見える質感が身体の存在をさらに引き立たせていました。

 最後の場面については意見が分かれる部分もあるそうですが、私は此の時代に最初細胞のように見える美術の中から生まれその中に戻って行く、というイメージが浮かびました。

 美しく、見応えのある素晴らしい作品でした。

今年は幸先がいい感じです。

そして、2月19日まで続く横浜ダンス・コレクション、どんな作品、ダンサーに出会えるでしょうか。

JaDaFo賞選考委員会~寒い日の熱い議論~

この中で熱い議論が…。

今年もこの季節になりました。

委員会に行く道に雪が残っていた年もあったな、と思い出したり。

 

発表は3月、ですが、1月のある日、JaDaFoのメンバーが集い、JaDaFo賞の選考委員会が行われました。

必然的に昨年のダンス・シーンを振り返る事にもなります。

それぞれの委員の言葉からは、「ダンス」というものの定義、「何を求めている」かが浮き彫りになり、楽しい一時でもありました。

 

自分とは違うけれど、納得、だったり、やっぱり違う、と思ったり。

いつもこうした生々しいヴィヴィッドな議論が活発に行えたらいいのに、と毎年思います。

 

結果はまた改めて情報解禁日にお知らせしたいと思います。

2016年のお話~個人的ステージベスト3~

『忘れろボレロ』舞台上には巨大な×。何故でしょう?

DDDの劇場へのアプローチ

『ルーツ』は見応え十分

はめる勇気はありませんでしたが顔ハメパネルも

一つずつ手作りのキーホルダー、かわいい!

2016年はこれ!という舞台を逃した傾向があったかもしれません。ノイマイヤー・ガラの評判を聞くと見られなくて残念…とか。

 

そんなですが、舞台色々からは下記の通り。

 

  1. 『忘れろボレロ』@DDD
  2. 『横浜ダンスフェスティヴァル2016』@神奈川県民ホール
  3. 『ルーツ』@KAAT

 

最近見る度に面白いな、と思うダンサーの一人が大植真太郎氏。

ものすごく動ける器用な身体で徹底的に遊んで見せる感じが突き抜けていて面白いのです。笑いの要素もあり、観客層が若いという印象もありますが、それも納得の面白さと実はすごいことをやっている身体の面白さに惹きつけられます。『談ス』も面白かったです!

 

横浜ダンスフェスティヴァルは既にこちらで取り上げていますが、作品ラインナップがとても工夫されていて、かつ高いクオリティだったのが印象に残っています。バレエしか見たことがないと思しき観客が帰途、見たことがないけれど面白かったと会話しているのが聞こえ、遠藤康行さんの意図がきちんと伝わっているのだなと感じました。

私は実はあまりガラ公演に強い関心を持てない事が多く、こちらも当日やっぱり見ようと思って行ったのですが、友人を誘えば良かったと思いました。

ガラがあまり好きではないというのは、「福袋」的な面白さは確かにありますし、そこでしか見られないパートナーや作品の面白さはあるのですが、表現としてできれば一つの作品を踊る姿の方をより見たい、と思ってしまうからです。

もちろん最近では小作品を踊りきるということありますが、一部を上演する場合どうしてもガラ向きの表現になるのが少し残念に感じられてしまうのです。

ちなみにトリプルビル、ダブルビルは好きですし、もう少し色々上演されたらいいのに、と思っています。現実的には全幕に比べて日本ではまだどうしても集客が厳しいそうで、その点も残念だと思っています。

 

年末間際に見た『ルーツ』は何とも色々考えさせられる公演となりました。

時代のカナリア的な存在として言葉を扱う演劇の方が表現しやすいのかな、とも思いました。まるで第一次世界大戦前のような空気が世界を覆う中にあって生まれ、印象に残る作品になったのではないかなと思います。

出演者のインフルエンザのための公演中止(楽は上演)は何とも残念、関係者の無念さを思うと言葉が出ません。

でも感染症とても増えています。色々大変な世の中になったのだと、改めて思います。

 

その他、ミラノ・スカラ座もカンパニーとしての魅力あふれる舞台でしたし、踊り続けるプロジェクト大山も「働く女性」としてのダンサーについても思いを巡らせた舞台となりました。(公演後のトークでそうした話題が出たものですから。)

勅使川原三郎『Scheherazade』

吉祥寺すずらん商店街の先にある入口の看板

ポスター

会場入り口のインスタレーションのようなしつらい

新年、いい舞台が続いて幸せです。

こちらの『Scheherazade』は昨年の『牧神の午後』に続いてのバレエ・リュス作品。ニジンスキーがその名声と人気を確固たるものにした作品『Scheherazade』を勅使川原三郎が振付、出演と聞いて楽しみに行きました。

 

何よりも音楽に惹かれたという勅使川原氏の言葉に納得。

音楽の間の波の音もまた、独自の空気を生んでいます。

 

イダ・ルビンシュテインが初演で踊った寵妃ゾベイダ。イダはプルースト、ダヌンツォといった錚々たる顔ぶれの熱心ファンをもつことになるダンサーです。そのイダの残された写真のイメージと、佐東利穂子の縦のライン、ほっそりとした身体のイメージは重なり、より洗練された印象。孤独でありながら官能的、背後の照明が時に月にも湖にも見え、湖ならば「白鳥の湖」の涙でできた湖も想起されます、見ていて様々なイメージが触発されて頭に浮かぶ表現力も魅力です。

 

元々の作品はトルコのハーレムを舞台とした不貞の物語です、妻の不貞を知って狩りに行くと見せかけて戻ってきたシャリアールとその一軍にゾベイダお気に入りの「金の奴隷」(これをニジンスキーが初演)を含め全員が切り殺され、ゾベイダの助命の祈りも聞き届けられず自害するといういわば愛欲と血の物語。そうした物語があのきらびやかな音楽と「官能的な」と評されたバクストによる鮮やかな色彩の中、ミハイル・フォーキンによる振付で上演され、上流階級を中心としたパリの観客に熱狂的に支持されたのです。美しさが圧倒する背徳感が作品の大いなる魅了だったと言えるでしょう。

 

今回はそうした物語をなぞるのではなく、音楽を踊る、と勅使川原氏は言われていましたが、どこか牧神的であったり、「解き放たれた野獣のよう」と評された官能的な獣のような魅力がほとばしった「金の奴隷」のイメージがちらちらと万華鏡のように入れ代わるイメージでした。何回かある暗転の前の首をきるような振りは奴隷の未来でもあり、物語を完全に無視しているといわけではありませんが、それはサイドストーリーのようなものと言ってもいいかもしれません。

 

カラスアパラタスという独自の空間の中で、広がりを感じさせる身体はさすがとしか言いようがありません。

特に残像のように残る腕、足の軌跡は勅使川原氏ならではで堪能しました。もっと見て居たいと思う舞台でした。

1月6日初演のこの舞台、14日までです。今回こそ本当にどうにか再訪をと思っています。おすすめです。

 

オフィシャルサイト:http://www.st-karas.com/karas_apparatus/

チケット予約:updatedance@st-karas.com

新年あけましておめでとうございます。

「ナタリア・ゴンチャロワによる舞台美術デザイン、THE RUSSIAN BALLET IN WESTERN EUROPE,1909-1920, W.A. Propert, JOHN LANE THE BODLEY HEAD LIMITD, London 1921 (500部限定書籍)より」

 

ゲラン、金鶏

『金鶏』の「シェマハの女王」を踊るイリーナ・バロノワ(バレエ・リュス・ド・モンテカルロ)、RUSSIAN BALLET, camera studies by Gordon Anthony, Geoffrey Bles, London1939より

ゲラン、「LIU」の広告、1930年のオペラ・リュス・ア・パリ(バレエ・リュス・ド・モンテカルロのいわば前身)の公式プログラムより

 

全てNaoko Haga Collectionより

明けましておめでとうございます。

今年の世界が穏やかなものになるよう、祈らずにいられません。

 

2017年は酉年、それにちなんでバレエ『金鶏』のご紹介から新年を始めたいと思います。

 

『金鶏』はバレエ・リュスで1914年に初演された後、バレエ・リュス・ド・モンテカルロによって再演され、長く踊り続けられたオペラ・バレエ作品です。

作曲はリムスキー・コルサコフで、彼の最後のオペラ曲。当時のロシアでは上演が許されず死後、1909年のモスクワで初演されました。それを見たディアギレフとブノワはバレエ・リュスの結成当時からこれをいつか上演したいと思っていたので、バレエ版として初演されたのです。

 その豊かな音楽とナタリア・ゴンチャロワによる鮮やかな色彩はバレエ・リュスを見慣れた観客も虜にする魅力を放っていました。バレエ・リュスが常に発信しつづけた、「最新のロシア」の魅力とロシア民話という「ネイティブなロシア」の魅了の両方を持つ作品でした。

 

1929年にバレエ・リュスが解散した後、1937年にバレエ・リュス・ド・モンテカルロで再演され、人気演目となりました。映画『バレエ・リュス~踊る歓び、生きる歓び~』では「金鶏」を踊るタチアナ・リアブンシスカの当時の姿を見ることができます。

 

この作品にちなんだ香水「金鶏」がゲラン社によって発売されたことは案外知られていないかもしれません。

ディアギレフは現在も売られているゲラン社の香水ミツコを愛用していたと伝えられていますし、バレエとのご縁も深いのです。

 

香水「金鶏」は調香師ジャック・ゲランによって1937年に発表されたものですが、彼は、バレエ『エスメラルダ』にちなんだ「Jasmiralda」という香水、ジョゼフィン・ベーカーのための「Sous le Vent」、オペラ『トゥーランドット』にちなんだ「LIU」(これは2012年限定で復刻されています)や貞奴のロイ・フラー劇場での公演成功をうけて「Yakko」を発表するなど劇場文化とも近しい香りをいくつも発表しています。残念ながらいずれも現在では失われた香りです。

 

「金鶏」は公式サイトによれば「ディアギレフのバレエ・リュス」へのトリビュートとして調香したと書かれています。その1937年は『金鶏』がバレエ・リュス・ド・モンテカルロによって再演されることが発表された年です(上演は1938年)。

香水瓶がタイの形になっているのはディアギレフの劇場での装いからとのこと。

 

1956年に廃盤になっていたのですが、2014年のクリスマス限定として復刻されたのが写真のもの。

世界で29個だけのバカラによる限定モデルも発売されましたが、私が持っているのは一般に販売されたモデルで、香水ではなく「金鶏」の香りのゴールドのパウダーが入っています。髪にも肌にもまとえます。

 

今年は酉年ですから、新年をこの香りと黄金の煌めきで始めたいと思います。

 

皆さまにとって素晴らしい一年でありますように!

そして世界にとっても。

 

今年もよろしくお願いいたします。

 

芳賀直子

マリインスキー劇場 初来日100年記念展@ロシア大使館迎賓館2階

ロシア大使挨拶。この日は前日のアレクサンドルフ・アンサンブルの三分の一のメンバーらが死去した飛行機墜落事故の犠牲者への黙祷から始まりました。

エレナ・スミルノワポートレート
会場での写真があまり鮮明に取れなかったので、活躍当時のポストカードから。(Naoko Haga Ballet Collection)

上部中央の写真の中心人物はボリス・ロマノフ。キャプションにありませんが、右はバレエ・リュス・ド・モンテカルロのワシリー・バジル大佐、左はルネ・ブルム。バレエ・リュス・ド・モンテカルロ結成が発表された1931年の写真ですから、色々想像が膨らみます。
右下は閑院宮載仁親王、1916年にロシアを訪問。公演に関わっているとの説明がありました。

1916年3月16,17,18日の帝国劇場公演チラシ。

スミルノワが出演している映画の一部も上映されました。

スミルノワがシベリア経由で日本へ向かう事についての劇場支配人テリヤコスフキーによる許諾書(3.12付)

英語プログラム表紙。チケットの値段も掲載されている。

アレクサンドル・ゴロヴィンによるスミルノワの肖像(1910)と。
会場にいらしていた友人が私のしているマフラーとぴったり!と撮ってくださいました。

 ロシア大使館の迎賓館でマリインスキー来日100周年展が行われるとお招きを受けました。その様子はNHK,テレビ東京でも放映されたのでご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

 

 初めて来日したダンサーがバレエ・リュスにも参加したロシア帝室劇場のエレナ・スミルノワ、ボリス・ロマノフ、そしてオルガ・オブラコワであったことはもう少し記憶されるべきだと思うので、いい機会だったのではないでしょうか。

そして、日本で初めて『瀕死の白鳥』を踊ったのが(ロマノフ演出とありますが)スミルノワであることももう少し記憶されてもいいでしょう。

 

 今回、来日が「マリインスキー劇場バレエ団」の初来日とされていましたが、これはセルジュ・リファールの1953年の来日が「パリ・オペラ座」来日とされるようなものでしょうか。実際は3名が来日、当時の公演プログラムには「PROGRAMME of the Imperial Theatre inPetrograd the Prima-Ballerina Mme. Smirnova, the master of Ballet, Romanoff and others」となっており、開演はいずれもマチネ1時でした。

10の小作品が上演され、その中には時世をうつす「三國同盟」という作品も上演されています。残っていない作品も多いラインナップです。

 

 今回の出品は50点程ですが、珍しい資料も多く専門家にはとりわけ大変興味深い展覧会でした。

すべて複製でしたので、バレエ会場ロビーなどでもっと多くの方の目に触れることができたらいいな、とも思いました。

スミルノワ、ロマノフ公演については最近新しい事も分かりつつありますので、少し研究が進むかもしれません。

12月はくるみ&くるみ

会場にはクリスマスツリーも沢山。雰囲気を盛り上げてくれます。

会場に展示されていた石田種生氏直筆のノーテーション(舞踊譜)

会場入口には“完売御礼”の文字も。後ろではお花やリース、入ると小さなクリスマスマーケットのようにお菓子やクッキーなどを売っています。

開幕前のロビーではミニコンサート。観客を楽しませる工夫が沢山。

スズキ・バレエ・アーツの会場、夜で見づらいですが鎌倉芸術館は中庭の竹も見事。

恒例のクリスマス・クッキーも出来上がりました。デコレーションはつい夢中になる作業です。

 12月は毎年『くるみ割り人形』ラッシュ、色々なバージョンが見られる楽しいシーズン。クリスマス気分も盛り上がります。

 

 今年1本目は井上バレエ団でした。オーソドックスな上品な仕上がり。終演後のクリスマスソング演奏もそろそろクリスマス、という気分を盛り上げてくれます。

 K-Balletは恒例の赤坂ACTシアターバージョン。「花のワルツ」を踊る吉田太郎氏はふわっと持ち上がる様なジャンプも美しく、首も長くラインも綺麗で、今後が楽しみなダンサー。(やはり重力を感じさせない、重力を裏切る感じもバレエの大きな魅力ですね)。山本雅也氏は王子初役とのことで、瑞々しい踊りでした。

 矢内千夏さんのクララもとても見たかったのですが、残念ながらどうしても日程が合いませんでした。

 

 東京バレエ団の秋元康臣氏は相変わらずのラインの美しさとノーブルさが際立ちました。メイクはもう少し映えるものがありそうですが…。最近多くなったプロジェクション・マッピングを使用した演出でした。1幕で人間がくるみ割り人形を演じたり、少し「?」と思う場面も。

 

 東京シティ・バレエ団はなごやかムード。地元に愛されるバレエ団という日本でのバレエの在り方としてはリアリティのあるバレエ団だと思っています。子供のコロンビーヌ、ピエロ、ムーア人はいつもかわいく、演技もしっかりしていて、見ていてほっこりします。

 東京シティ・バレエ団は7月の石田種生版『白鳥の湖』公演の際に石田種生氏のノーテーションの展示をされていました。こうしたものが残っていたことを知らなかったのですが、非常に貴重な資料ですし、ノーテーションを会場で一部ではあれ、見ることができるのは個人的に嬉しいというだけではなく、バレエがどうやって伝わっていくのか、振付けられていくのかという事を考えるきっかけになるのではないと思いました。

 広い客層を持つバレエ団だからこそ、そうした事もプログラム誌上含めて発信して欲しいな、とも思いました。

 

 今年最終の『くるみ割り人形』はスズキ・バレエ・アーツによるもの。確か2014年にフリッツ役を踊っていた山本達史氏は、現在所属する東京バレエ団の『くるみ割り人形』のフランスの踊りでも魅力を発揮していました。今後も楽しみなダンサーです。

 新国立劇場は『くるみ割り人形』上演がなく『シンデレラ』。長田佳世氏の引退公演でしたが、まだまだ踊れるダンサーで残念だなと思いました。仙女の木村優里さんは空気を作りつつ盛り上げるという大役にふさわしい踊りと楚々とした美しさで印象的でした。6月には『ジゼル』を主演、今から楽しみです。

来年はどんな舞台に、そして『くるみ割り人形』に出会えるのでしょうか。

今年もそろそろ終わりです。

クリスマスに『ミルピエ~パリ・オペラ座に挑んだ男~』公開!

映画にも出てきますが、パリ・オペラ座の屋上から見るパリが一番好き。こんな懐かしいものが出てきました。

12月23日からBunkamuraにて『ミルピエ~パリ・オペラ座に挑んだ男~』が公開されます。レビューを下記のサイトで執筆しています。

 

http://www.danceartcenter21.com/book-cinema

 

また、同時公開の『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』は見ると本当にスカラ座に飛んで行ってしまいそうになる映画。どちらも試写で拝見しましたが、バレエ・ファンだけではない方々が楽しめるのではないかな、と思います。

 

パリ・オペラ座は本当に美しい劇場。パリに行くと朝から夕方まで図書館、そしてホテルに戻って着替えて夜も再びと言う事も多い愛着もある劇場です。その中で起こっていたことがこうして映像として残るのは異例ですから、資料としてもとても貴重だと思います。