簡単に「奇跡」と言う言葉は使いたくありませんが、今回のこのCOVID19禍下で今年来日公演を見ることができるは想像していませんでした。(ウィーンフィルという例はありますが、あれは多分に「政治案件」的な部分もあるので例外という印象でしたので)
彩の国さいたま芸術劇場へ向かう与野本町からの道は風がなかなかに強く、冬を感じる陽気。久しぶりに来るなと思いつつ劇場へ向かいました。
劇場の上にはクレッセントムーンが映えていました。
そして、外には検温のための行列が…。
元々の日程から変更があり、かつ2日間の公演が1日になった経緯があるのですが、満席の客席には開演前から何とも言えない、漫画だと「期待…」と文字がでそうな空気に満ちていました。
まず登場したのは演奏者たち。
見慣れない古楽器は音の豊かさだけではなく、見た目にも美しいものでした。バンドネオン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボ、バロックギター、そして四角い太鼓のような打楽器など私は見たことがなかった楽器も次々登場するパーカッションが演奏し続ける舞台。
それぞれの奏者の背景にはパネルがあり、それが舞台の進行に合わせてロールカーテンのように上に引っ張られる形で変化していきます。これもとても綺麗でした。
そして、木製の戦闘用ヘルメットと装具をつけた姿で登場するシェニョーはバロックダンス的な踊りで幕が開きます。
変化し続けるジェンダー、イメージ、そしてダンス。
メインビジュアルとして公開されていた木馬トゥとでもいうべきトゥシューズを履いて乗った先端がとがった足元だけの木馬で激しく踊る姿は「驚異」としかいいようがありません。最後の衣裳も12㎝以上はあるハイヒール。これをヒールが折れるのでは?と思うほどの激しく打ちつけて踊る姿はハイヒール好きの私にはとりわけ印象に残る場面でした。
下手をすればその技術のすごさに注目が集まってしまいそうな作品ですが、それはスペインの歴史的に重層のある音楽、様々なスタイルの歴史を行き来するダンス、そして歌唱が「オルランド」の世界を独自に昇華して見せて圧巻。
文字通り鳴りやまない熱い拍手が続き、シェニョーがそのリズムで足を鳴らす場面もあり、久しぶりに「劇場の熱気」を強く感じることができる夜でした。
劇場が再開になってからもっとも印象に残る舞台となりました。
当日プログラムに挟みこまれた「解説・歌詞対訳本」も作品世界の理解に重要な役割があるように思いました。
これから京都ロームシアター、北九州劇場で上演が行われます。お近くの人は是非!
https://rohmtheatrekyoto.jp/lp/romances_saitama_kyoto_kitakyushu/
フランソワ・シェニョー&ニノ・レネの日本公演向けのキュートな動画はこちらにあります