2015年のお話~個人的展覧会ベスト3~

 少し遅ればせですが、2015年のお話も…。

 

 昨年も沢山の展覧会を見ました。中でもこれは良かったな、と記憶に鮮やかに残るのは下記の展覧会でしょうか。

グエルチーノ展、インパクトある入口パネル

1.よみがえる バロックの画家、グエルチーノ展

2015年3月3日~5月31日 国立西洋美術館

チェントの地震がなかったら実現しなかったであろう展覧会、と考えると微妙な心持はするものの、日本でこれだけの大作、名作を見ることができるのはなかなかない事で何とも贅沢な展覧会でした。グエルチーノが直接学んだわけではありませんが、画業においては「師」と言えるカラッチの作品も合わせて見られるというのも素晴らしかったです。キャプションも文字数は多めでしたが、なるほどと思える点が多かったのも印象に残りました。宮下喜久朗氏の講演も学ぶところの多い充実した内容でした。私としては珍しく2回も足を運んだ展覧会でした。

同時代の画家で大好きな一人、カラヴァッジョの大規模な展覧会が2016年開催されるのも今から楽しみです。

芸術大学展示のお知らせパネル、出品作品が一部掲載されています

2.藤田嗣治展覧2つ

≪舞踏会の前≫修復披露展 2015月12月1日~6日、東京芸術大学美術館展示室2 

MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示 2015年9月19日~12月13日 東京国立近代美術館

 

共に近年ようやく日本で再評価の進む藤田嗣治の展覧会です。

前者は大変会期が短かったのですが、修復された作品の美しさだけではなく、修復についての解説も興味深いものでした。また、卒業作品や1930年代のノートは藤田の生活や人柄をしのばせる生々しい記録として印象的でした。ノートの中に1920年代藤田嗣治のバレエに関わる仕事についての一文を求めて調査しに伺いたいと思っています。

 

後者は初めての一斉全点展示。訪れたタイミングが良かったのかもしれませんが、想像していた混雑はなくゆっくり見ることができました。今までは1920年代の藤田作品を中心に見てきたので、未だ論議の中にある戦争画やメキシコ時代の絵画などもっと知りたいと思う時代の作品の展示を見ることができたのも楽しい事でした。藤田嗣治の作品への舞台芸術の仕事の影響は見逃せないのではないかと思っていますが、なかなか検証するに至っていません。

111点は修復済との事ですが、状態の悪い展示作品もあり、これまでの藤田嗣治の国内での評価を反映しているようにも思えて複雑な心境にもなりました。

*今年は映画『FOUJITA』も公開されました。2014年のフランス滞在時に同映画プロデューサーたちと一緒にしたディナーでお話を伺い、楽しみにしていた公開でした。 

ポスター、チケットは歌麿でした。画面構成力・デザイン力は今でも通用する新鮮さ

3.春画展 2015年9月12日~23日、永青文庫

大英博物館での開催大成功を受けて、日本でもさすがにどこかが開催するだろうと思っていたのですが、2年の月日を経てようやく開催。他の国公立系での実現不能と聞いて色々がっかりとし、また呆れもしました。今回の実現は細川家当主、永青文庫理事長細川護熙氏の英断によるもの。大きな拍手を送りたいと思った方も多かったと思いますが、私もその一人です。

初めてこれだけの点数をまとめて見て圧倒されながらも豊かな性の世界を楽しんだ日本の先人達の思いや視線、技術を堪能することができました。専門の方には当然なのかもしれませんが、着物の「空擦り」の精密さや美しさ、そして今更ですが写楽の圧倒的な画面構成力に目が惹きつけられました。

明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

世界は不穏な空気が漂っていますが、平和な年であってほしいと祈るような気持ちで迎えた新年です。

今年は日本で新年を迎えておりますが、忘れられない新年がいくつかあります。

一つはユーロ導入の年のパリ。当時、フランスではユーロ導入に対しては定着するのか半信半疑と言った受け止められ方で、一部ではユーロマークを灯すイヴェントも行われていたものの、基本的には淡々とその日を迎えていました。

とはいうもの新しいお札を手にしてみたかった私は、年明けを待っていそいそと換金しに行ったのです。ところが、何と…ユーロ紙幣はまだない、と結局フランになってしまったのを覚えています。

もうほとんどの人が忘れているかもしれませんが、当時ユーロとフランの換算だけをしてくれる電卓が沢山売られていました。大活躍した電卓でした。

例えば八百屋さんでフルーツを買うと、こちらはフランで払っているのにおつりはユーロ、あるいは逆ということが起こるため、どちらの通貨かを選んで数字を押せばいいだけの小さな電卓はお店では大活躍したのです。

 

それで思い出した事があります。

年明け、いつものように古書市に向かいました。私はユーロとフランを両方持っていたのですが、まだユーロの手持ちが少なかったのです。ですがちょっと使って見たい、そう思って最初にお店がフランで行った金額をまずユーロに換算してもらいました。ところが案外な数字に…そこでやっぱりフランで払うわ、というと端数の関係なのでしょう、最初のフランの金額より安くなってしまったのです。

お店の方も承知でしたが、笑って、「これがユーロマジックかも」なんて言ってその価格で売ってくれました。そんなおおらかなのも市の面白さの一つでしょう。

古書店や骨董市での思いがけないやりとりや、思い出に残るお話などまたこちらでご紹介していかれればと思っています。

クリスマス・シーズンの終わり…。

ロビーのツリーの前では記念写真を撮る人が沢山

 今年の『くるみ割り人形』ラッシュも終わりを迎えました。私の2016年ラストは新国立劇場でした。昨年まで生徒さんだった木村優里さんがプリンシパルとして「金平糖の精」で大役をエレガントに果たされていました。「クララ」も似合いそう、と思いつつ楽しみました。

 

『くるみ割り人形』の会場はどこもいつもより華やか、クリスマスツリーは定番、ねずみがロビーに出てきたり、子供たちにお菓子を配ったり…。おめかしした子供たちの姿もほほえましいものです。

KBallet幕間のクッキー付きキャラメルティー

KBalletと東京シティ・バレエ団の「くるみ割り人形」プログラム
クリスマスらしさが一杯です。

 KBalletさんのビュッフェではキャラメルティーにかわいいジンジャーマンのクッキーが添えられていました。Kballet版はホフマンの原作を重視した物語も見応えのある演出で大人っぽい感じ。版による違いも楽しみの一つです。

 市民でバレエを支える活動が生んだ東京シティ・バレエ団は子供たちが沢山出演しながらもオーソドックスなバージョンですが、今年で30周年だそう。日本のバレエの在り方の一つとして一観客として応援している活動です。こちらも地域のお菓子屋さんが会場に多数出展、美味しくてかわいいクリスマスのお菓子が買えるのも楽しみの一つ。こういう季節感も嬉しいですね☆

 

FUTARI de ZUCCUでは客席にこんなプレゼンテーション。紙飛行機の手紙も靴も作品でも大きな役割が♪

毎年恒例のクリスマスクッキー、製作中…

 コンテンポラリーダンスでもクリスマスの空気のある公演がありました。『FUTARI de ZUCCU』、コンドルズの藤田善宏氏とタップダンスの村多正樹氏という異色の組み合わせ。池袋のダンスではあまり使わないスペース空洞という会場を横長に使っていました。サンタクロースにかけた子供の願いを叶える童話風のストーリーながら、願いをかなえる代わりに代償も払わなくてはいけないという厳しい結末…。それでいながら心もほっこり温まる作品でした。(会場のクリスマスデコレーションも素敵だったのですが写真を撮りわすれてしまいました。)

 会場には親子席も設けられ、親子でも楽しめる、でも子供に寄り添って簡単にしすぎたりはしない、という姿勢も好感が持てます。タップとのバランスも絶妙で「二人」でやる意義が大きかった点でも、今年のコンテンポラリーダンス公演の中でも私にはとても印象に残る良い作品でした。このCAT-A-TAC二人会は11月の『未亡人』も面白かったので、今後も楽しみ♪

 来年はどんな舞台に出会えるでしょうか。

そろそろ『くるみ割り人形』

初めて買ってもらったカラヤン指揮の『くるみ割り人形』LP。今見ると王子のコスチュームが『パラード』のレオタードに見えてしまいます。

2015年冬の初『くるみ割り人形』は井上バレエ公演でした。いよいよクリスマス・シーズンです。井上バレエ団『くるみ割り人形』プログラム

12月は『くるみ割り人形』の季節です。バレエの舞台自体がクリスマスの夜なので、当然のことかもしれません。都内近郊だけでも毎年少なくとも7,8本程度の『くるみ割り人形』を見ることができます。日本全国ですともっと沢山ありますが…。

それぞれの演出の違いを見るのも楽しいですし、カンパニーによっては幕間にダンサーがロビーでお菓子を配ったり、観客との写真撮影に応じたり、また、客席に向かって最後に小さな袋に入ったお菓子を投げたり、いつもと違う「フェスティヴ=お祭り的な」ムードが漂います。
『瀕死の白鳥』を当たり役とした20世紀最高のダンサーの一人、アンナ・パヴロワが初めて見たのバレエも『くるみ割り人形』だったと伝えられていますが、バレエを志す人達や、バレエ関係者でも初めての作品だったという方も多いかもしれません。

私も初めてあぁ、バレエってすごい!と思ったのは子供時代にベルギーでその日だけTV放映されていた『くるみ割り人形』でした。そして初めて父にねだって買ってもらったLPも『くるみ割り人形』でした。当時帝王カラヤン全盛時代で子供でもその名前をしっているほどでした…。
繰り返し聞いたことをよく覚えています。中でも「花のワルツ」の音楽に響きは想像の世界を膨らませてくれました。VTRはまだない時代でしたから、音楽を聞きながら、頭の中でバレエのシーンを再現していたのも懐かしい思い出です。
さて、今年はどんな『くるみ割り人形』に出会えるでしょうか…。