ジゼル

『ジゼル』から『Mariage』へ… 『ジゼル』@上野 東京文化会館  CAT-A-TAC『Mariage』@神楽坂 セッションハウス

新国立劇場バレエ団の『ジゼル』 劇場は実は水辺にあるとも言えます(ヒラリオン・ハンスが落とされるのは沼ですけれど)

ジゼル

K Ballet『ジゼル』の公演プログラムはいつも大判サイズです

CAT-A-TAC

作品フライヤーからも楽しさが伝わる?!

グッズデザイナーでもある藤田善宏氏によるグッズも魅力的。昨年のバッグと今回のTシャツ。あまりグッズに興味がない私もつい欲しくなる可愛さです。

 今年の日本は『ジゼル』の当たり年と言えそうです。
ボリショイ・バレエ団に始まり、新国立劇場、K Balletと『ジゼル』が続きました。
難しい事は承知ですが、“『ジゼル』共通チケット”のようなものがあれば、手軽に違うカンパニーで同じ作品を見る楽しさを多くの人が楽しめるのに…と思わずにいられません。バレエは作品で見ても面白いですし、人で見ても、縦糸横糸色々なので、そうした楽しみ方に多くの人がアクセスできればいいなと思います。

 

 『ジゼル』は『白鳥の湖』と違って結末がバージョンやバレエ団によって違うということはありませんが、役名含め違いはあります。
また、人物や心情の描き方も様々です。ジゼルは気弱で病弱な少女なのか、元気いっぱいだけれど心臓に持病があるという影を持つ少女なのか、アルブレヒトの恋は戯れなのか、本気なのか、そしてヒラリオン(新国立バレエ団上演のセルゲーエフ版ではハンス)の姿は粗野で向こう見ずな姿から、「愛されキャラ」まで幅広いですから、見どころが沢山。同じバレエ団でも踊る人によって作品世界はもちろん変わりますから、そんな楽しみ方もしたいものです。

 

 K Balletの荒井裕子氏のジゼルは本当に可愛らしい町娘。その純真な恋心が悲劇へ向かう様は心に迫るものがありました。ジゼルになってからの凛とした姿、そしてふわりと跳ぶ様はやっぱりロマンティック・バレエの傑作の一つだなと思う出来栄え。
山本雅也氏は瑞々しい王子を演じ、好印象。堀内将平氏のヒラリオンはジゼルに獲物ではなく花をプレゼントしますが、それにすら気付いてもらえず、苛立ち、苦しむ姿も印象に残りました。また、アルブレヒトの従者ウィルフリードの心情、行動にはリアルな人間を感じました。
 新国立劇場の『ジゼル』は木村優里氏で見ましたが、とても丁寧で繊細なジゼル、本当に飛んで消えてしまいそうな儚い佇まいでした。渡部峻郁氏は少しのほほんと育てられた王子という印象、ハンスの中家正博氏の演技力はインパクトの強いものでした。
 写真が撮れませんでしたが、ロビーの氷のデザートも気分にも陽気にもぴったりでした。こういう「遊び」も劇場には大切だな、と思います

 

 『ジゼル』を見た後で向かったのは『Mariage』…とちょっと面白い取り合わせになりました。
CAT-A-TACはコンドルズのメイン・ダンサーの一人である藤田善宏氏の個人ユニットですが昨年12月の『FUTARI de ZUCCU』も楽しくてちょっとキュンとする作品でした。今回も遊び心に溢れ、肉体的には実は難しい場面もさらりと面白く見せたり、何とも軽やかで個人のキャラクターが立った作品で、楽しく幸せな気持ちになりました。説明的すぎないけれどストーリーはクリア。まさにフライヤーにある「ちょっと変わったパフォーマンスダンスストーリー」の通り。
 ダンスにあまりなじみがない人をお連れしてもきっと楽しんでいただける作品。それでありながらダンスとしても面白い!藤田善宏氏の作品は今後も見たいな、楽しみだなと思います。

ダンスカフェサロンinあうるすぽっと2017『現代舞踊学セミナー』

ダンスカフェサロンinあうるすぽっと2017『現代舞踊学セミナー』が下記の通り開催されます。
私は秋の後期1回目に登壇いたします。1992年にパリ・オペラ座でみた『白鳥の湖』、そして今年香港で見たミュンヘンバレエも印象的な毛利臣男さんの衣裳からバレエ、歌舞伎に迫ります。

 

前期「ダンスのジオグラフ」
第1回 8月12日(土)16:00「マメリカンダンスの系譜:モダンとポストモダン」講師:石井達郎 ゲスト:折原美樹・加藤みや子
第2回 9月23日(土)15:30「フィンランドのコンテンポラリー・ダンス」講師:立木燁子
第3回 10月14日(土)19:00「謎多きダイス大国イスラエル:その秘密を探る」講師:乗越たかお

 

後期「ダンスの観方、読み方」
第4回11月11日(土)19:00「踊る衣裳~スーパー歌舞伎からパリ・オペラ座まで~」講師:芳賀直子 ゲスト:毛利臣男
第5回12月9日(土)19:00「ベルギーダンス:ローザスを中心にその魅力を語る」講師:カテフミ ゲスト:前田圭蔵
第6回2018年1月20日(土)16:00「ダンスと演劇―身体と歴史」講師:竹重伸一 ゲスト:鴻英良

 

料金:500円
お問合・ご予約:dancecafe-21@krb.biglobe.ne.jp
メールは件名:「ダンスカフェサロン申込」
➀参加希望講座日程、②お名前(同伴者有無)③ご連絡先(電話もしくはemail)をお知らせ下さい

新刊『祇園祭の愉しみ~山鉾と御神輿の悦楽~』発売のお知らせ

『祇園祭の愉しみ~山鉾と御神輿の悦楽~』(京都しあわせ倶楽部)、PHP出版

『祇園祭の愉しみ~山鉾と御神輿の悦楽~』(京都しあわせ倶楽部)、PHP出版
2017年6月18日発売
定価1500円(税別)

 

お祭への想いとリスペクトと10年以上の知恵をぎゅっと詰め込んで、心を込めて書いた一冊です☆
バレエとの意外な共通点も少し…。
「よそもん」の私が通い続けて見つけた穴場、秘密にしておきたい場所もえい!とご紹介しています。
是非お手にとっていただき、今年の祇園祭(土日ですから行きやすい方が多いのでは…)を楽しんでいただけたら、と思います。
予約開始となっているサイトもありますので、よろしくお願いいたします!

 

Amazon

 

honto
https://honto.jp/netstore/pd-book_28440234.html

 

紀伊国屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784569833613

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

初めての「鎌倉祇園」~ 京都のお祭を追いかけていたら地元のお祭に出会いました~

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

八雲神社から白丁烏帽子姿たちに担がれて御神輿が出発、大町町内をめぐります。

大町四つ角での神輿振り。

大町四つ角での神輿振り。夜ははんてん姿で担がれます。「悪疫退散招福繁昌」が奉舁するひとにも参拝する人にも約束されるそう。

祇園祭の本を書いていたお正月にたまたま立ち寄った八雲神社。「神社略記」によると1081~1084年頃、鎌倉で悪疫に苦しむ住民を見て新羅三郎義光公が京都の祇園社を勧請し祈願したのが始まりとのこと。

 

そういえば大町にある「祇園山」は小さい頃ハイキングに行った記憶がぼんやりとありますが、その「ぎおんやま」が「祇園」と関係あるとは考えてもみませんでした。(明治維新で「八雲神社」に改称されたそう)

 

今年は近くにお住まいの方にお招きを受けてひさしぶりにのんびりとした日を楽しみました。白装束は清々しく、夜の三基の御神輿が出る場面はなかなか壮観。

ボリショイ・バレエ団来日公演@東京文化会館

左からワディム・レーピン、スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

左からオリガ・ゴロジェツ ロシア連邦副首相、ウラジーミル・ウーリン ボリショイ劇場総裁、アレクサンドル・ジュラフスキー 文化副大臣(写らなかったのですがアンドレイ・コンチャロフスキー映画監督、エヴゲーニー・アファナシエフ駐日ロシア大使らも)

フォトセッションを待つ美しきザハロワ。記者会見なのに圧倒的な美しさに目を奪われてしまいました…

会場内には来日60周年についてのパネル展示も…

あまりいい写真が撮れなかったのでオフィシャルより、ワディム・レーピンとスヴェトラーナ・ザハーロワ

 ボリショイ・バレエ団が来日公演を行っています。初来日から60周年も話題です。最近使われなくなった言葉ですが、オーケストラ、指揮者、バレエ団の「引っ越し公演」です。

 

『ジゼル』を見に行きました。沢山のジゼルを見ていますが、今回のボリショイ・バレエ団の『ジゼル』、主役はもちろんですが、群舞のすばらしさやクーランド公の圧倒的な存在感と演技力も強く印象に残る独特の味わいでした。技術のすばらしさは言うまでもなく、しかも高レベルに揃っていて圧巻です。作品全体を通じて世界がしっかり立ち上がる「舞台芸術」としての美しさが堪能できました。
 これから見る『白鳥の湖』、『パリの炎』もとても楽しみ。
 まだ公演によってはチケットがあるようですから、迷っている方は是非!!と関係者でもないのに宣伝したくなる素晴らしさです。

 

 以前マリインスキー・バレエ団が2000年の来日公演で『眠れる森の美女』を上演した時もあまりに素晴らしくて、帰途電車内から知り合いに見た方がいい!!とメールし続けたのを思い出しました。その振付家セルゲイ・ヴィハレフの死去の報には驚きました。ご冥福を心から祈ります。復元上演にも積極的に取り組まれ、一方で新作もとまだまだ活躍が期待されていた振付家でしたから本当に残念です…。

 

 公演の前にロシア大使館での『ロシア・シーズン』及び『トランス=シベリア芸術祭in Japan2017』記者会見に出席しました。
政府肝いりで始まった『ロシア・シーズン』とあって副首相も出席する会見となりましたが、詳細はこれからといったところのよう。(プレス資料にも「セゾン・リュス」と「ロシア・シーズン」が混在、会見ではバレエ・リュスの「セゾン・リュス」にちなんでというようなニュアンスの発言もありましたが、バレエ・リュスの「セゾン・リュス」は1年目の準備期間はロシア帝室を背景にしていたものの、結局はそれらの援助を失ったセルジュ・ディアギレフによる興行でしたから「?」という気持ちも…。専門家はロシアには沢山いるはずですから色々な事情があったのでしょう。)
『トランス=シベリア芸術祭 in Japan2017』の芸術監督はワディム・レーピン。スヴェトラーナ・ザハーロワとは夫婦ですが、どちらも最高峰の芸術家。開催は渋谷Bunkamuraで2プログラム『SVETLANA ZAHAROVA AMORE』が9月26日、9月27日、『PAS DE DEUX FOR TOES AND FINGERS』が9月29日。(前橋公演は10月1日)
前者はザハロワの会見での言葉を借りれば「愛というテーマに貫かれた3つの作品」、まったく違う世界なので「「百聞は一見にしかず、是非両方見て欲しい」とのこと。

 

 ザハーロワが圧倒的な美しさで、自ら日本が夫との出会いの場所だったというエピソードも披露しました。共演するデニス・ロヂキンも会見で抱負を語りました。どのような公演になるのでしょうか。

レセプションで挨拶するポルーニン、踊りのアグレッシブさとは裏腹の繊細な雰囲気

「黄金週間」いろいろ~ポルーニンから夜光虫まで~

レセプションで挨拶するポルーニン、踊りのアグレッシブさとは裏腹の繊細な雰囲気

『ヴンダーカンマー』榎忠、大須大作。使用済弾頭が並び、油の匂いがリアルでした

『Training Day-樹脂片観音菩薩像-』大森記詩

近づくと武器のプラモデルでできています…

岡本光博作廃棄物がつまったフレコンパックを擬人化した「#255DADAモレ」、青秀裕の「Ghost Lightning」からなる作品『トモダチ大作戦』。実物大だというF-35戦闘機はこんなスケール。

奈良美智新作『森の子』ご一緒した榎本了壱氏と

勅使川原三郎と佐東利穂子による『トリスタンとイゾルデ』

ロビーでも盛り上がる独特のテンション↑

『花粉革命』初日挨拶をする笠井瑞丈氏、後ろのポスターのデザインも実は笠井叡氏初演と同じイメージ

羊も観客も増量?

ROSASは『Fase』(1982年初演)と『時の渦-Vortex Temporum』(2013年初演)の2本

これほどの夜光虫は初めて見ました。上手に撮れていませんが幻想的でした

 世間は「黄金週間」だったようですが、普段よりマチネ公演が多いかな、というのが正直な感想。

 

 青森県立美術館の会議に出席し、『LOVE LOVE ショー2』(1は2010年開催)展を見ました。タイトルから想像できないなかなか政治的主張も強い作品も出品されていて、こうしたものが県立で開催できるのは今の日本で良いことなのでは、と思いました。ちなみに「出逢いをコンセプトとした展覧会」とのことなので、「ラブラブ」からイメージするものとは違って当然だったのですが…。新しい奈良美智作品も見ることができました。そして2006年から11年ぶりに4枚揃った『アレコ』の幕も。(2021年3月頃まで4枚見られるとのこと)

 

 映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン-世界一優雅な野獣』のプロモーションで来日していたポルーニンのイヴェントにも出席。奏楽堂でパイプオルガンを背景にして踊られた「Take Me To Church」は美しいものでした。久しぶりに、あぁ美しい身体(特に脚)を見たという気分でもありました。映画は7月公開、必見です!

 

 両国のシアター・カイでは『トリスタンとイゾルデ』。勅使川原三郎氏の最近の活躍ぶりは本当に言い古された言葉ですが「目覚ましい」としかいいようがありません。あの長い作品を1時間という時間に凝縮して、触れない愛を目の前で展開する舞台でした。目が離せず、そしてもっと見ていたいと思う舞台でした。

 

 六行会ホールでの『King of  Buck』は若いエネルギーがほとばしる舞台と観客。KRUMPというロサンジェルスで生まれたダンススタイルによる公演。考えてみたらバレエでも存在しますが、10代のダンサーが活躍も目立ちます。開演前にもロビーで踊る人が…という熱さは独特です。それぞれの場面という設定で見せるのはなるほど、と思いました。次の才能、それも舞台作品を作るような方向性を期待したいなと思ってしまいます。

 

 世田谷パブリック・シアターでは『花粉革命』。16年前(そんなに経ったとは驚きです)の笠井叡氏の踊るイメージが息子である笠井瑞丈氏のダンスから蘇る体験も独特でした。初日に見たのですが、「振り」が自分の身体にさらに入っていきそうで良くなりそうと話していたら、実際その後見た方からはそうだったという感想を聞きました。強烈で鮮やかな作品。また見たいな、と思いました。

 

 ROSAS『時の渦-Vortex Temporum』は最初7人のミュージシャンが登場して演奏するところから始まり、ダンスはどこでするのかしらと思って見ていたのですが、まさかグランドピアノまで一緒に移動するとは。多層的な時間と音楽が重なり合うダンス作品で、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの振付家としての円熟も感じられる作品でした。

 池袋芸術劇場では“タクト・フェスティヴァル2017”も見る事ができました。『月と太陽-Eclipse-』、共にバリの芸術であるガムランの演奏と影絵という他にはない組み合わせと面白さ。ワークショップも見学しましたが、かなり細かい動きができる影絵はなかなか複雑、上演中は見えませんがそれぞれに実はカラフル。楽器も一つ一つが美しく、演奏者のバティック衣裳も素敵でした。シルコ・アエレオの『ピアニスト』は笑いも、客席とのやりとりも楽しい作品。笑いが止まらない人も続出でした。

 毎年恒例となった感のある羊も今回は劇団コープスの20周年とのことで、「ひつじ増量計画」との広告通り、多頭になっていました。観客も沢山。

 

 そしておまけは30年ぶりという由比ヶ浜海岸の夜光虫。55日の舞台帰途、Twitterで画像を見て本当かな、とビーチサンダルに履き替えて見に行きました。想像以上の光と美しさでした。残念ながら写真は今一つですが、光のビーチ、という感じ。その後深夜2時まで134が渋滞としたと聞きましたが、これは翌日の仕事がない連休ならではかしら…。

草間弥生による新作インスタレーション

ダンサー@GINZA SIX Preview

草間弥生による新作インスタレーション

とてもフォトジェニックな草間弥生による新作インスタレーション

MAKE UP FOR EVERではダンサーがポーズを決めてくれました。
ご一緒したのは出版プロデューサーの久本勢津子さん。

話題の銀座GINZA SIXプレビューに行ってきました。

地下の観世能楽堂を是非!と思ったのですが、行ってみたらこちらは開場しておらず残念でした。会場記念公演は20日からだそうですが、招待貸切公演で、一般発売があるのは24日の昼、夜公演のみだそう。

アクセス抜群の場所で新しい観客がお能に出会えたら素敵だなと思っています。お能の両方が気軽に銀座で楽しめるようになるのですから。
お能だけではない会場との事なので、今後の発表も待ち遠しいです。

思いがけずダンサー達にも出会いました。動きが美しいな、とお尋ねしたら、『ロメオとジュリエット』にも出演されていた鮫島拓馬氏(写真左)と『エリザベート』のトートダンサー白髭真二氏(写真右)でした。どちらも見た公演なので、思いがけない所で出演者にお会いした、という感じです。上半身は毎日変わるボディペイントで、所要時間は3時間以上とか。
オープニング20日は11:30~18:00、MAKE UP FOR EVERブースにいらっしゃるそうです。パフォーマンスも見られるかも。

また屋上庭園は中から眺めるだけでしたが、東急プラザもでしたが、最近はこうしたパブリックエリアを充実させる流れなのかもしれませんね。パフォーマンスもできそうです。森ビルによるモールなので森美術館監修によるアート作品も色々。新しい名所になるのは間違いなさそうです。
 
鮫島拓馬氏Twitter
https://twitter.com/takumakumama
 
白髭真二氏Twitter
https://twitter.com/sshirahige

『バクスト~バレエ・リュスからオートクチュールまで』展@パリ・オペラ座

展覧会入口

手前から『シェエラザード』のゾベイダのヘッド・ドレス、衣裳、壁には『火の鳥』の衣裳のタマラ・カルサヴィナ、その奥にもバクストの舞台衣裳デザインが見えます。

バクストからディアギレフへの手紙も(1919年3月24日付)

バレエ・リュスの大パトロネス、ミシアのための帽子デザイン。バレエ・リュスで活躍している時期に手掛けていたのも興味深い事です。

出品内容の多くが既に見たものだから、見送ろうかなと一度は思ったものの、やはり見たくなって閉幕間際のバクスト展を見に行ってきました。

以前、同じパリ・オペラ座ガルニエの会場で開催されたバレエ・リュス、バレエ・スエドワ展の時より明らかに入場者が多かったのは全体の入場者が増えているからなのか、それともバクストにある程度知名度が(日本と違って)あるのかは判然としませんでした。

 

ファッション・デザイナーとしての部分もクローズ・アップして紹介していましたが、これは忘れられがちな彼の顔の一つかもしれません。時期もファッション・ウィークに重なっていたので、そうした方々も足を運ばれたかもしれません。

バクストは帽子、衣裳、テキスタイルなどもデザインも手がけていましたが、そうしたデザインの展示は見に行った価値がありました。

彼のデザインの影響力は死後、現在に至るまで定期的に繰り返しデザイン・ソースとして多くのデザイナーに用いられているほどです。出品されていたカール・ラガーフェルドによるクロエだけではなく、1998年のガリアーノによるクリスチャン・ディオールのコレクション(ショーも『牧神の午後』の動き、イメージが多数ちりばめられていました)、エルメス、稲葉賀恵…と色々なデザイナーが用いています。

画家、舞台美術家、衣裳デザイナー、そしてテキスタイル、ファッション、さらにはコティなどの化粧品パッケージまで手広い彼の活躍を紹介した展覧会でした。

 

会場では『牧神の午後』『薔薇の精』も上演されていました。3月31日に1日だけ日本で上映された2009年のバレエ・リュス記念公演も一部場内で上映されて、こちらもなかなかの混雑ぶりでした。

 

なかなか豪華なカタログも発行されました。出品作品についてはもちろん、詳細な年表に映画、デザイナーとしての顔、また映画との問題など内容も充実しています。会期後もオペラ座や書店で購入可能。

3月26日、30日 バレエ史特別講義に登壇いたします。

アーキタンツが主催するダンスワークショップ『世界との出会い』の集大成である1週間のインテンシブセミナー、『世界への歩み』の一環として行われるバレエ史を担当いたします。
一般の方先着10名に無料で受講いただけることになりました。原則2回の参加が可能な方となりますが、下記お申込み先までご連絡下さい。お越しをお待ちしております。

 

3月26日(日) 17:30-19:00 @03studio
3月30日(木) 17:30-19:00 @02studio

詳細 http://a-tanz.com/10117

お申込方法

1. 直接:スタジオ アーキタンツ
東京都港区芝浦1-13-10 第3東運ビル4階

2. お電話:03-5730-2732

3. メール:dance@a-tanz.com

メールの場合は下記事項をご記入下さい。
➀ ご希望のワークショップ名(解剖学/バレエ史)
② ご希望の参加日時
③ お名前(ふりがな)
④ ご年齢
⑤ 性別
⑥ お電話番号
⑦ ダンス歴など(ダンスジャンルとおおよその年数)

SIMON GRAICHYピアノ・リサイタル@シャンゼリゼ劇場

当日プログラムも12pの充実したものでした

終演後のロビーに登場。サインにお話にと長蛇の列ができました。手の大きさも印象的

 今回の渡仏の公演で一番心に残ったのがSIMON GHRAICHY のリサイタルでした。

会場は、『春の祭典』100周年上演の記憶もまだそう古くはないシャンゼリゼ劇場。

 

 バレエ、ダンスがない日にリサイタルがあったので、当日になってふらりと出かけました。

これがびっくりするほど煌めきのある演奏だったのです。

 

 ピアノ好きの方、音楽好きの方には日本でも知られている人なのかもしれませんが、私は不勉強にして知らなかったので驚きました。出てくるだけで歓声が上がっていましたし、後で気付きましたが、地下鉄には多くのポスターが貼られていましたから話題の公演だったのかもしれません。

 

 1曲目のアルトゥロ・マルケスから小さな美しいきらびやかな打ち上げ花火のように頭の中(なのか目の前なのか…)ではじけ続ける感じの音。ずっと聞いていたいと思ってしまいました。

 演奏曲は9曲、ドビュッシー、ファリャといったバレエ・リュスでも同じの面々も、またリスト、アルベニス等多彩。オリジンであるメキシコの作曲家マニュエル・マリア・ポンセ、や南米の作曲家ルネスト・レクオーナ、エイトル・ヴィラ・ロボス、カマルゴ・グアルニエリといった様々な表情の曲を独自のカラーで弾きこなすピアニスト。

 アンコールには何と新譜CD『SIMON GHRAICHY HERITAGES』で世界初演というパーカショニストとの演奏で、CDと曲順構成が同じというちょっとしゃれた演出。これがまた面白くて、そういえばピアノは打楽器、打楽器同士なのに、こんなに違う、そしてある点で共通…とわくわくする気持ちで聞きました。

 

 当日でしたし、あまりいいお席を取れなかったのですが、これもまたいい経験になりました。この劇場はどこの席でも本当に音が良い事を実感したのです!

シャンデリアも近くで見られましたし、劇場上部の装飾や階によって違う扉の装飾も楽しめました。劇場は色々な席で見ると違った楽しさがありますね。(バレエ、ダンスはやはり正面を取ってしまうので知らなかったのです。)

 アールデコの粋を集めたこの美しい劇場、ますます好きになりました。

 

 この劇場を建てた興行師ガブリエル・アストリュクはこのために破産したのですが、装飾のみならずこの音響は様々なこだわりもその背景にあるのかもしれないと思ったり…。

 破産しても100年後も美しい劇場を造ったのだから本当に素晴らしい事。

またこの劇場を訪れたい、できれば彼の演奏でと思いました。帰ってからもその日に会場で買い求めた2枚の彼の演奏ばかり聞いています。

 SIMON GRAICHYはメキシコ、レバノンオリジンだそうですが、今年のニューイヤー・コンサート指揮も素晴らしかったグスターボ・ドゥダメルといい音楽は南米オリジンが熱いのかもしれません。

 

曲をダウンロードもできるサイト:https://simonghraichy.com/