「ナタリア・ゴンチャロワによる舞台美術デザイン、THE RUSSIAN BALLET IN WESTERN EUROPE,1909-1920, W.A. Propert, JOHN LANE THE BODLEY HEAD LIMITD, London 1921 (500部限定書籍)より」

 

ゲラン、金鶏

『金鶏』の「シェマハの女王」を踊るイリーナ・バロノワ(バレエ・リュス・ド・モンテカルロ)、RUSSIAN BALLET, camera studies by Gordon Anthony, Geoffrey Bles, London1939より

ゲラン、「LIU」の広告、1930年のオペラ・リュス・ア・パリ(バレエ・リュス・ド・モンテカルロのいわば前身)の公式プログラムより

 

全てNaoko Haga Collectionより

明けましておめでとうございます。

今年の世界が穏やかなものになるよう、祈らずにいられません。

 

2017年は酉年、それにちなんでバレエ『金鶏』のご紹介から新年を始めたいと思います。

 

『金鶏』はバレエ・リュスで1914年に初演された後、バレエ・リュス・ド・モンテカルロによって再演され、長く踊り続けられたオペラ・バレエ作品です。

作曲はリムスキー・コルサコフで、彼の最後のオペラ曲。当時のロシアでは上演が許されず死後、1909年のモスクワで初演されました。それを見たディアギレフとブノワはバレエ・リュスの結成当時からこれをいつか上演したいと思っていたので、バレエ版として初演されたのです。

 その豊かな音楽とナタリア・ゴンチャロワによる鮮やかな色彩はバレエ・リュスを見慣れた観客も虜にする魅力を放っていました。バレエ・リュスが常に発信しつづけた、「最新のロシア」の魅力とロシア民話という「ネイティブなロシア」の魅了の両方を持つ作品でした。

 

1929年にバレエ・リュスが解散した後、1937年にバレエ・リュス・ド・モンテカルロで再演され、人気演目となりました。映画『バレエ・リュス~踊る歓び、生きる歓び~』では「金鶏」を踊るタチアナ・リアブンシスカの当時の姿を見ることができます。

 

この作品にちなんだ香水「金鶏」がゲラン社によって発売されたことは案外知られていないかもしれません。

ディアギレフは現在も売られているゲラン社の香水ミツコを愛用していたと伝えられていますし、バレエとのご縁も深いのです。

 

香水「金鶏」は調香師ジャック・ゲランによって1937年に発表されたものですが、彼は、バレエ『エスメラルダ』にちなんだ「Jasmiralda」という香水、ジョゼフィン・ベーカーのための「Sous le Vent」、オペラ『トゥーランドット』にちなんだ「LIU」(これは2012年限定で復刻されています)や貞奴のロイ・フラー劇場での公演成功をうけて「Yakko」を発表するなど劇場文化とも近しい香りをいくつも発表しています。残念ながらいずれも現在では失われた香りです。

 

「金鶏」は公式サイトによれば「ディアギレフのバレエ・リュス」へのトリビュートとして調香したと書かれています。その1937年は『金鶏』がバレエ・リュス・ド・モンテカルロによって再演されることが発表された年です(上演は1938年)。

香水瓶がタイの形になっているのはディアギレフの劇場での装いからとのこと。

 

1956年に廃盤になっていたのですが、2014年のクリスマス限定として復刻されたのが写真のもの。

世界で29個だけのバカラによる限定モデルも発売されましたが、私が持っているのは一般に販売されたモデルで、香水ではなく「金鶏」の香りのゴールドのパウダーが入っています。髪にも肌にもまとえます。

 

今年は酉年ですから、新年をこの香りと黄金の煌めきで始めたいと思います。

 

皆さまにとって素晴らしい一年でありますように!

そして世界にとっても。

 

今年もよろしくお願いいたします。

 

芳賀直子