吉祥寺すずらん商店街の先にある入口の看板

ポスター

会場入り口のインスタレーションのようなしつらい

新年、いい舞台が続いて幸せです。

こちらの『Scheherazade』は昨年の『牧神の午後』に続いてのバレエ・リュス作品。ニジンスキーがその名声と人気を確固たるものにした作品『Scheherazade』を勅使川原三郎が振付、出演と聞いて楽しみに行きました。

 

何よりも音楽に惹かれたという勅使川原氏の言葉に納得。

音楽の間の波の音もまた、独自の空気を生んでいます。

 

イダ・ルビンシュテインが初演で踊った寵妃ゾベイダ。イダはプルースト、ダヌンツォといった錚々たる顔ぶれの熱心ファンをもつことになるダンサーです。そのイダの残された写真のイメージと、佐東利穂子の縦のライン、ほっそりとした身体のイメージは重なり、より洗練された印象。孤独でありながら官能的、背後の照明が時に月にも湖にも見え、湖ならば「白鳥の湖」の涙でできた湖も想起されます、見ていて様々なイメージが触発されて頭に浮かぶ表現力も魅力です。

 

元々の作品はトルコのハーレムを舞台とした不貞の物語です、妻の不貞を知って狩りに行くと見せかけて戻ってきたシャリアールとその一軍にゾベイダお気に入りの「金の奴隷」(これをニジンスキーが初演)を含め全員が切り殺され、ゾベイダの助命の祈りも聞き届けられず自害するといういわば愛欲と血の物語。そうした物語があのきらびやかな音楽と「官能的な」と評されたバクストによる鮮やかな色彩の中、ミハイル・フォーキンによる振付で上演され、上流階級を中心としたパリの観客に熱狂的に支持されたのです。美しさが圧倒する背徳感が作品の大いなる魅了だったと言えるでしょう。

 

今回はそうした物語をなぞるのではなく、音楽を踊る、と勅使川原氏は言われていましたが、どこか牧神的であったり、「解き放たれた野獣のよう」と評された官能的な獣のような魅力がほとばしった「金の奴隷」のイメージがちらちらと万華鏡のように入れ代わるイメージでした。何回かある暗転の前の首をきるような振りは奴隷の未来でもあり、物語を完全に無視しているといわけではありませんが、それはサイドストーリーのようなものと言ってもいいかもしれません。

 

カラスアパラタスという独自の空間の中で、広がりを感じさせる身体はさすがとしか言いようがありません。

特に残像のように残る腕、足の軌跡は勅使川原氏ならではで堪能しました。もっと見て居たいと思う舞台でした。

1月6日初演のこの舞台、14日までです。今回こそ本当にどうにか再訪をと思っています。おすすめです。

 

オフィシャルサイト:http://www.st-karas.com/karas_apparatus/

チケット予約:updatedance@st-karas.com