映画『新世紀 パリ・オペラ座』(原題:The Paris Opera)

オペラ・ハウスの実像にぐっと迫った迫力ある映画でした。

(c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

(c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

オペラ座での写真は少ないのですが、随分前のこんなものが…。ガルニエ宮の屋上にて。

オペラ座での写真は少ないのですが、随分前のこんなものが…。ガルニエ宮の屋上にて。

映画『新世紀 パリ・オペラ座』(原題:The Paris Opera)

 

パリ・オペラ座はガルニエ宮もバスティーユもどちらも一つの町のような劇場だと思います。

この映画は、新たな切り口からオペラ・ハウスの巨大な組織という実像にせまろうとしているように感じました。

 

ジャン=ステファヌ・ブロン監督は、フレデリック・ワイズマン監督の『パリ・オペラ座のすべて』でガルニエは描かれ切っているし、他にも撮られているからという理由でバスティーユを中心としたと語っているそうです。

変容するオペラ座、「現代」のオペラ座を描こうと思った場合、ガルニエの圧倒的な艶やかさよりもバスティーユの方がイメージに合うでしょう。また、バスティーユというのは、革命の勃発した場所、権力を打破する象徴的な場所でもありますから、そんな事も背景にあるのかもしれません。彼が描こうとした新しいオペラ座の姿は地殻変動のさなかの姿ですから、バスティーユがふさわしかったのでしょう。

 

私が初めてバスティーユを訪れたのは1992年。毛利臣男氏美術・衣裳の『白鳥の湖』がとても印象的でした。また劇場から見える光景がこれまでのガルニエとは違った下町風であることも当時は少し不思議に感じたのも覚えています。

今での図書館がガルニエ宮にあることもあり、バスティーユはバレエやオペラそして講演でアンフィテアトルを訪れた位ですから、見たことのないバスティーユ・オペラ座を映画で垣間見られたのも楽しい事でした。

 

『学校とオペラの10カ月』という芸術・文化に触れる機会のない子供たちのプログラムは不勉強にして知りませんでした。英国ではフェスティバルホールでそのような公演に立ち会って感激したことがあるのですが、パリ・オペラ座にもそのようなプログラムがあり、25年以上続いているとはすばらしい事だなと思いました。どうしてもバレエ中心でスケジュールを組んでしまいますが、是非公演にも立ち会ってみたいものです。

 

バレエではミルピエのバレエ芸術監督辞任、オレリー・デュポンの就任が描かれていますが、はっとする台詞も色々。ここまでよく撮れたな、とも思いました。チケットの価格をめぐるリアルなやり取りなどまさに「今」動いているオペラ座を感じました。是非ご覧になって「おっ」と思って下さい。

 

バレエという側面からは2016年に日本公開された『ミルピエ~パリ・オペラ座に挑んだ男~』(Relève : histoire d'une création)や『パリ・オペラ座を継ぐ者たち』と併せてみるとより理解が深まりそう。

今年はバレエ、オペラ座の映画が豊作な珍しい年で、嬉しい限りです。

この映画を見て実際に舞台へ足を運ぶ観客が増えたらいいな、とも思います。

公開は都内ですとBunkamuraシネマなどで12月9日から。

 

 

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タイトル:「新世紀、パリ・オペラ座」

公開表記:12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

クレジット:(c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

配給:ギャガ

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監督:ジャン=ステファヌ・ブロン

出演:・ステファン・リスナー(オペラ座総裁)、バンジャマン・ミルピエ(芸術監督)、オレリー・デュポン(芸術監督)、フィリップ・ジョルダン(音楽監督)、ロメオ・カステルッチ(オペラ演出)、ブリン・ターフェル(バリトン)、ヨナス・カウフマン(テノール)、オルガ・ペレチャッコ(ソプラノ)、ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(バリトン)、ジェラルド・フィンリー(バリトン)、ミハイル・ティモシェンコ(期待の新星)

原題:The Paris Opera /2017/フランス/カラー/110分/字幕翻訳:古田由紀子/字幕監修:堀内修

公式HP:http://gaga.ne.jp/parisopera/

新国立劇場でマクミラン版『春の祭典』@新国立劇場 オペラパレス

1920年代、ジャズエイジ!という印象のポスター

 2013年にストラヴィンスキー音楽、ニジンスキー振付で初演された『春の祭典』は現在に至るまで沢山の振付家によって新しいバージョンが生まれ続けています。

ストラヴィンスキーの音楽が振付家、ダンサーを刺激してやまないということでしょう。

そんなバージョンの一つ、1962年初演、マクミラン版の『春の祭典』が小林紀子バレエ団によって日本初演されましたので見てきました。

 

 英国では『春の祭典』100周年に際して英国ロイヤル・バレエ団で上演されたのですが、私はパリ、シャンゼリゼ劇場のオリジナルのニジンスキー版再現上演とサシャ・ヴァルツの同時上演を見に行っており、見られなかったのです。

 

 You Tubeで初演を踊った元英国ロイヤル・オペラ・バレエの芸術監督モニカ・メイソンのインタビューと指導時の映像やin sight という英国ロイヤル・バレエ団のプログラム時の指導映像を見ることができます。こういう映像はありがたいですね。

https://www.youtube.com/watch?v=QzY_JDr3xws

https://www.youtube.com/watch?v=RfGrZZX_nd0

https://www.youtube.com/watch?v=OZ97W_rRGiQ

 

 手形がついた衣裳、長いウィッグといったインパクトの強い初演の衣裳とは違いましたが、今回の美術・衣裳は2012年イングリッシュ・ナショナル・バレエ団再演時のデザイナー、キンダー・アグニーニによるアボリジニに想を得たという独特のもの。

個人的にはオリジナルも見て見たかったな、と思いましたが、プリミティブな印象はこの

美術・衣裳の方が強いのかもしれません。

 

 1960年代ならではの空気感もある振付で、意義深い公演だと思いました。

『春の祭典』は本当に振付家・ダンサーを魅了し続けていますが、マクミランも魅了された一人だったようです。

 

 面白いのは音楽のインパクトがあまりに強いためか、あるいはストラヴィンスキーが考えたという円になって踊るというイメージが強いためか、それとも初演のニジンスキー版のイメージゆえなのか、かなりの確率で円形になって立つ群舞、そして最後は一人あるいは二人が中央に持ち上げられる場面で終了する事でしょうか。

 

 同時に上演された同じくマクミラン振付『La Fin du Jour』は元々ゲランの「ルール・ブルー」というタイトルとされていた(商標のため使用できずに現在のタイトルになった)洒脱な作品でした。

『バレエの情景』はアシュトン振付で1948年に初演されましたが、実はこの音楽に最初に振付けたのはバレエ・リュスの最後のスターの一人、アントン・ドーリンなのです。個人的にはそうした歴史的なエピソードもプログラムで紹介いただけたら、少しずつでもバレエ・リュスが身近になるのに、とつい思ってしまいます。

この作品はバレエ・リュスの『ロミオとジュリエット』と「現在の“レ・シルフィード」を掛け合わせたような作品、という印象でした。その当時の最新のファッションイメージと軽快で、洒落た振付けは、初演の少し前のノスタルジーを感じさせる作品でもありました。

 

 マクミラン没後25周年記念と銘打たれたこのトリプル・ビル、なかなか日本で上演されない作品を見られる貴重な公演でした。せっかくの機会なので、プログラムにもう少し作品についての紹介があると多くの人に理解されやすいかもしれないな、と思いました。

三若差し上げ

祇園祭も終わり

鷹山お囃子

鷹山のお囃子も楽しみました

手作り茅の輪。ちゃんと丸く仕上がりました

大茅の輪をくぐります

三若差し上げ

三若(中御座)神輿、最後の差し上げ。旗と提灯にも注目です!

四若(東御座)の勇壮な差し上げ。最後の鐶鳴らしのテンションもMaxでした

錦差し上げ

錦(西御座)差し上げ。一番遅い時間に八坂神社に到着されます。たまたま他の方のカメラフラッシュで明るくとれました

 後祭を追えて、7月31日、祇園祭は無事幕を下ろしました。
今年も沢山の新しい瞬間、心奪われる瞬間に立ち会うことができました。 

 

 祇園祭の本を出した年、ということで新しい出会いもありました。また、バレエの時とは違う方達からの反応をいただいたり、嬉しい場面も沢山ありました。

 

 後祭の宵山では鷹山が初めての日和神楽。新しい屋台も立派でした。一歩ずつ復興に向かう姿に見守る人の数も増加の一途をたどっています。会所に出されていた「権之助茶屋」の黒蜜のかき氷もとても美味、ありそうでなかったメニューで人気がでそうです。

 

 後祭では『祇園祭の愉しみ』の素晴らしい写真を撮られた井上成哉様が八幡山の行司役をされていたので、ご説明もいただきながら、いつも以上に熱心に拝見しました。鳩が可愛らしく、また屏風祭も楽しい山です。

 

 昼は後祭の巡行を追いかけ、夜は御神輿さんを追いかけて、深夜の御霊戻しまで歩きまわりました。(携帯の万歩計によれば3万7千歩(!) だそう)
ここに立ち会うと、あぁそろそろ終わりと寂しくなります。御神輿を担がれている方達も還幸祭が近づくと寂しくなるとおっしゃられていました。

 

 そして、31日、同じ八坂神社の「疫神社夏越祭」で大茅の輪をくぐり、茅の輪を作って「蘇民将来之子孫也」の護符をいただきました。今年は友人の分と3つ。少しずつ上手になってきたな…。

 

 また1年無事で過ごせますように、そしてまた来年…の祈りを込めて。

 

『祇園祭の愉しみ~山鉾と御神輿の悦楽~』(京都しあわせ倶楽部)、PHP出版『祇園祭の愉しみ~山鉾と御神輿の悦楽~』芳賀直子著 好評発売中発売

Leningrad hotel

『レニングラードホテル』と『桃』~“美丈夫”の日?~

Leningrad hotel

ムード溢れる『レニグラード・ホテル』入口。お花も沢山届いていました。

桃

入口に飾られているのはフライヤーの表、内側とのコントラストが印象的

モノクロを開くと色っぽい桃色、なのですがこれも上手に撮るのは難しい色

舞台の多い時期でどれを見に行くか迷います。
昼はスパイラルホールで『レニングラードホテル』、夜は神楽坂セッションハウスで『桃』。

 

『レニングラード・ホテル』は首藤康之さんとCAVAによるもの。
チラシ、ポスターの雰囲気そのままの洒脱でスタイリッシュな舞台。席におかれているインビテーションカードのような当日プログラムも洒落た作りでした。台詞がないのに台詞が聞こえてきそうな独特の世界をキャラクター設定がはっきりした出演者で楽しむことができました。
首藤康之氏の存在感は舞台を引きしめているように感じました。バレエ・ダンサーから始めて着実に新しい表現の世界を広げていく首藤康之氏の姿は頼もしいな、と感じます。そしてもっと見たいと思った舞台でした。

 

夜は『桃 Spooky action at a distance!!』
こちらは言葉も発する作品でしたが、色々な感覚を刺激してくる舞台でした。振付の鯨井謙太郎氏は意外な事にソロは昨年が初めて、今回は多人数のダンサーを振付。これまでと違う方法論を試みたとの事で、定方まこと氏とのユニット、CORVUSともまた違った世界観で、この先も楽しみ。
当日プログラムの「地上で起る事は 地上で終る 地上で起こらぬ事は 地上で終わらぬ」という一文が残りました。

 

そして、アフタートークでもなるほど、と思う事が色々ありました。
まさか本当のお母さまとの共演とは不勉強にして気付きませんでしたし。
鯨井氏は何といっても身体が切れるので、動いてしまえば圧倒的なのですが、動かず表現をというところはまだまだよくなりそう。

 

いずれも見応えのある公演でした。

ジゼル

『ジゼル』から『Mariage』へ… 『ジゼル』@上野 東京文化会館  CAT-A-TAC『Mariage』@神楽坂 セッションハウス

新国立劇場バレエ団の『ジゼル』 劇場は実は水辺にあるとも言えます(ヒラリオン・ハンスが落とされるのは沼ですけれど)

ジゼル

K Ballet『ジゼル』の公演プログラムはいつも大判サイズです

CAT-A-TAC

作品フライヤーからも楽しさが伝わる?!

グッズデザイナーでもある藤田善宏氏によるグッズも魅力的。昨年のバッグと今回のTシャツ。あまりグッズに興味がない私もつい欲しくなる可愛さです。

 今年の日本は『ジゼル』の当たり年と言えそうです。
ボリショイ・バレエ団に始まり、新国立劇場、K Balletと『ジゼル』が続きました。
難しい事は承知ですが、“『ジゼル』共通チケット”のようなものがあれば、手軽に違うカンパニーで同じ作品を見る楽しさを多くの人が楽しめるのに…と思わずにいられません。バレエは作品で見ても面白いですし、人で見ても、縦糸横糸色々なので、そうした楽しみ方に多くの人がアクセスできればいいなと思います。

 

 『ジゼル』は『白鳥の湖』と違って結末がバージョンやバレエ団によって違うということはありませんが、役名含め違いはあります。
また、人物や心情の描き方も様々です。ジゼルは気弱で病弱な少女なのか、元気いっぱいだけれど心臓に持病があるという影を持つ少女なのか、アルブレヒトの恋は戯れなのか、本気なのか、そしてヒラリオン(新国立バレエ団上演のセルゲーエフ版ではハンス)の姿は粗野で向こう見ずな姿から、「愛されキャラ」まで幅広いですから、見どころが沢山。同じバレエ団でも踊る人によって作品世界はもちろん変わりますから、そんな楽しみ方もしたいものです。

 

 K Balletの荒井裕子氏のジゼルは本当に可愛らしい町娘。その純真な恋心が悲劇へ向かう様は心に迫るものがありました。ジゼルになってからの凛とした姿、そしてふわりと跳ぶ様はやっぱりロマンティック・バレエの傑作の一つだなと思う出来栄え。
山本雅也氏は瑞々しい王子を演じ、好印象。堀内将平氏のヒラリオンはジゼルに獲物ではなく花をプレゼントしますが、それにすら気付いてもらえず、苛立ち、苦しむ姿も印象に残りました。また、アルブレヒトの従者ウィルフリードの心情、行動にはリアルな人間を感じました。
 新国立劇場の『ジゼル』は木村優里氏で見ましたが、とても丁寧で繊細なジゼル、本当に飛んで消えてしまいそうな儚い佇まいでした。渡部峻郁氏は少しのほほんと育てられた王子という印象、ハンスの中家正博氏の演技力はインパクトの強いものでした。
 写真が撮れませんでしたが、ロビーの氷のデザートも気分にも陽気にもぴったりでした。こういう「遊び」も劇場には大切だな、と思います

 

 『ジゼル』を見た後で向かったのは『Mariage』…とちょっと面白い取り合わせになりました。
CAT-A-TACはコンドルズのメイン・ダンサーの一人である藤田善宏氏の個人ユニットですが昨年12月の『FUTARI de ZUCCU』も楽しくてちょっとキュンとする作品でした。今回も遊び心に溢れ、肉体的には実は難しい場面もさらりと面白く見せたり、何とも軽やかで個人のキャラクターが立った作品で、楽しく幸せな気持ちになりました。説明的すぎないけれどストーリーはクリア。まさにフライヤーにある「ちょっと変わったパフォーマンスダンスストーリー」の通り。
 ダンスにあまりなじみがない人をお連れしてもきっと楽しんでいただける作品。それでありながらダンスとしても面白い!藤田善宏氏の作品は今後も見たいな、楽しみだなと思います。

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

初めての「鎌倉祇園」~ 京都のお祭を追いかけていたら地元のお祭に出会いました~

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

パンフレットの中心は猿田彦のイラスト

八雲神社から白丁烏帽子姿たちに担がれて御神輿が出発、大町町内をめぐります。

大町四つ角での神輿振り。

大町四つ角での神輿振り。夜ははんてん姿で担がれます。「悪疫退散招福繁昌」が奉舁するひとにも参拝する人にも約束されるそう。

祇園祭の本を書いていたお正月にたまたま立ち寄った八雲神社。「神社略記」によると1081~1084年頃、鎌倉で悪疫に苦しむ住民を見て新羅三郎義光公が京都の祇園社を勧請し祈願したのが始まりとのこと。

 

そういえば大町にある「祇園山」は小さい頃ハイキングに行った記憶がぼんやりとありますが、その「ぎおんやま」が「祇園」と関係あるとは考えてもみませんでした。(明治維新で「八雲神社」に改称されたそう)

 

今年は近くにお住まいの方にお招きを受けてひさしぶりにのんびりとした日を楽しみました。白装束は清々しく、夜の三基の御神輿が出る場面はなかなか壮観。

ボリショイ・バレエ団来日公演@東京文化会館

左からワディム・レーピン、スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

左からオリガ・ゴロジェツ ロシア連邦副首相、ウラジーミル・ウーリン ボリショイ劇場総裁、アレクサンドル・ジュラフスキー 文化副大臣(写らなかったのですがアンドレイ・コンチャロフスキー映画監督、エヴゲーニー・アファナシエフ駐日ロシア大使らも)

フォトセッションを待つ美しきザハロワ。記者会見なのに圧倒的な美しさに目を奪われてしまいました…

会場内には来日60周年についてのパネル展示も…

あまりいい写真が撮れなかったのでオフィシャルより、ワディム・レーピンとスヴェトラーナ・ザハーロワ

 ボリショイ・バレエ団が来日公演を行っています。初来日から60周年も話題です。最近使われなくなった言葉ですが、オーケストラ、指揮者、バレエ団の「引っ越し公演」です。

 

『ジゼル』を見に行きました。沢山のジゼルを見ていますが、今回のボリショイ・バレエ団の『ジゼル』、主役はもちろんですが、群舞のすばらしさやクーランド公の圧倒的な存在感と演技力も強く印象に残る独特の味わいでした。技術のすばらしさは言うまでもなく、しかも高レベルに揃っていて圧巻です。作品全体を通じて世界がしっかり立ち上がる「舞台芸術」としての美しさが堪能できました。
 これから見る『白鳥の湖』、『パリの炎』もとても楽しみ。
 まだ公演によってはチケットがあるようですから、迷っている方は是非!!と関係者でもないのに宣伝したくなる素晴らしさです。

 

 以前マリインスキー・バレエ団が2000年の来日公演で『眠れる森の美女』を上演した時もあまりに素晴らしくて、帰途電車内から知り合いに見た方がいい!!とメールし続けたのを思い出しました。その振付家セルゲイ・ヴィハレフの死去の報には驚きました。ご冥福を心から祈ります。復元上演にも積極的に取り組まれ、一方で新作もとまだまだ活躍が期待されていた振付家でしたから本当に残念です…。

 

 公演の前にロシア大使館での『ロシア・シーズン』及び『トランス=シベリア芸術祭in Japan2017』記者会見に出席しました。
政府肝いりで始まった『ロシア・シーズン』とあって副首相も出席する会見となりましたが、詳細はこれからといったところのよう。(プレス資料にも「セゾン・リュス」と「ロシア・シーズン」が混在、会見ではバレエ・リュスの「セゾン・リュス」にちなんでというようなニュアンスの発言もありましたが、バレエ・リュスの「セゾン・リュス」は1年目の準備期間はロシア帝室を背景にしていたものの、結局はそれらの援助を失ったセルジュ・ディアギレフによる興行でしたから「?」という気持ちも…。専門家はロシアには沢山いるはずですから色々な事情があったのでしょう。)
『トランス=シベリア芸術祭 in Japan2017』の芸術監督はワディム・レーピン。スヴェトラーナ・ザハーロワとは夫婦ですが、どちらも最高峰の芸術家。開催は渋谷Bunkamuraで2プログラム『SVETLANA ZAHAROVA AMORE』が9月26日、9月27日、『PAS DE DEUX FOR TOES AND FINGERS』が9月29日。(前橋公演は10月1日)
前者はザハロワの会見での言葉を借りれば「愛というテーマに貫かれた3つの作品」、まったく違う世界なので「「百聞は一見にしかず、是非両方見て欲しい」とのこと。

 

 ザハーロワが圧倒的な美しさで、自ら日本が夫との出会いの場所だったというエピソードも披露しました。共演するデニス・ロヂキンも会見で抱負を語りました。どのような公演になるのでしょうか。

レセプションで挨拶するポルーニン、踊りのアグレッシブさとは裏腹の繊細な雰囲気

「黄金週間」いろいろ~ポルーニンから夜光虫まで~

レセプションで挨拶するポルーニン、踊りのアグレッシブさとは裏腹の繊細な雰囲気

『ヴンダーカンマー』榎忠、大須大作。使用済弾頭が並び、油の匂いがリアルでした

『Training Day-樹脂片観音菩薩像-』大森記詩

近づくと武器のプラモデルでできています…

岡本光博作廃棄物がつまったフレコンパックを擬人化した「#255DADAモレ」、青秀裕の「Ghost Lightning」からなる作品『トモダチ大作戦』。実物大だというF-35戦闘機はこんなスケール。

奈良美智新作『森の子』ご一緒した榎本了壱氏と

勅使川原三郎と佐東利穂子による『トリスタンとイゾルデ』

ロビーでも盛り上がる独特のテンション↑

『花粉革命』初日挨拶をする笠井瑞丈氏、後ろのポスターのデザインも実は笠井叡氏初演と同じイメージ

羊も観客も増量?

ROSASは『Fase』(1982年初演)と『時の渦-Vortex Temporum』(2013年初演)の2本

これほどの夜光虫は初めて見ました。上手に撮れていませんが幻想的でした

 世間は「黄金週間」だったようですが、普段よりマチネ公演が多いかな、というのが正直な感想。

 

 青森県立美術館の会議に出席し、『LOVE LOVE ショー2』(1は2010年開催)展を見ました。タイトルから想像できないなかなか政治的主張も強い作品も出品されていて、こうしたものが県立で開催できるのは今の日本で良いことなのでは、と思いました。ちなみに「出逢いをコンセプトとした展覧会」とのことなので、「ラブラブ」からイメージするものとは違って当然だったのですが…。新しい奈良美智作品も見ることができました。そして2006年から11年ぶりに4枚揃った『アレコ』の幕も。(2021年3月頃まで4枚見られるとのこと)

 

 映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン-世界一優雅な野獣』のプロモーションで来日していたポルーニンのイヴェントにも出席。奏楽堂でパイプオルガンを背景にして踊られた「Take Me To Church」は美しいものでした。久しぶりに、あぁ美しい身体(特に脚)を見たという気分でもありました。映画は7月公開、必見です!

 

 両国のシアター・カイでは『トリスタンとイゾルデ』。勅使川原三郎氏の最近の活躍ぶりは本当に言い古された言葉ですが「目覚ましい」としかいいようがありません。あの長い作品を1時間という時間に凝縮して、触れない愛を目の前で展開する舞台でした。目が離せず、そしてもっと見ていたいと思う舞台でした。

 

 六行会ホールでの『King of  Buck』は若いエネルギーがほとばしる舞台と観客。KRUMPというロサンジェルスで生まれたダンススタイルによる公演。考えてみたらバレエでも存在しますが、10代のダンサーが活躍も目立ちます。開演前にもロビーで踊る人が…という熱さは独特です。それぞれの場面という設定で見せるのはなるほど、と思いました。次の才能、それも舞台作品を作るような方向性を期待したいなと思ってしまいます。

 

 世田谷パブリック・シアターでは『花粉革命』。16年前(そんなに経ったとは驚きです)の笠井叡氏の踊るイメージが息子である笠井瑞丈氏のダンスから蘇る体験も独特でした。初日に見たのですが、「振り」が自分の身体にさらに入っていきそうで良くなりそうと話していたら、実際その後見た方からはそうだったという感想を聞きました。強烈で鮮やかな作品。また見たいな、と思いました。

 

 ROSAS『時の渦-Vortex Temporum』は最初7人のミュージシャンが登場して演奏するところから始まり、ダンスはどこでするのかしらと思って見ていたのですが、まさかグランドピアノまで一緒に移動するとは。多層的な時間と音楽が重なり合うダンス作品で、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの振付家としての円熟も感じられる作品でした。

 池袋芸術劇場では“タクト・フェスティヴァル2017”も見る事ができました。『月と太陽-Eclipse-』、共にバリの芸術であるガムランの演奏と影絵という他にはない組み合わせと面白さ。ワークショップも見学しましたが、かなり細かい動きができる影絵はなかなか複雑、上演中は見えませんがそれぞれに実はカラフル。楽器も一つ一つが美しく、演奏者のバティック衣裳も素敵でした。シルコ・アエレオの『ピアニスト』は笑いも、客席とのやりとりも楽しい作品。笑いが止まらない人も続出でした。

 毎年恒例となった感のある羊も今回は劇団コープスの20周年とのことで、「ひつじ増量計画」との広告通り、多頭になっていました。観客も沢山。

 

 そしておまけは30年ぶりという由比ヶ浜海岸の夜光虫。55日の舞台帰途、Twitterで画像を見て本当かな、とビーチサンダルに履き替えて見に行きました。想像以上の光と美しさでした。残念ながら写真は今一つですが、光のビーチ、という感じ。その後深夜2時まで134が渋滞としたと聞きましたが、これは翌日の仕事がない連休ならではかしら…。

『バクスト~バレエ・リュスからオートクチュールまで』展@パリ・オペラ座

展覧会入口

手前から『シェエラザード』のゾベイダのヘッド・ドレス、衣裳、壁には『火の鳥』の衣裳のタマラ・カルサヴィナ、その奥にもバクストの舞台衣裳デザインが見えます。

バクストからディアギレフへの手紙も(1919年3月24日付)

バレエ・リュスの大パトロネス、ミシアのための帽子デザイン。バレエ・リュスで活躍している時期に手掛けていたのも興味深い事です。

出品内容の多くが既に見たものだから、見送ろうかなと一度は思ったものの、やはり見たくなって閉幕間際のバクスト展を見に行ってきました。

以前、同じパリ・オペラ座ガルニエの会場で開催されたバレエ・リュス、バレエ・スエドワ展の時より明らかに入場者が多かったのは全体の入場者が増えているからなのか、それともバクストにある程度知名度が(日本と違って)あるのかは判然としませんでした。

 

ファッション・デザイナーとしての部分もクローズ・アップして紹介していましたが、これは忘れられがちな彼の顔の一つかもしれません。時期もファッション・ウィークに重なっていたので、そうした方々も足を運ばれたかもしれません。

バクストは帽子、衣裳、テキスタイルなどもデザインも手がけていましたが、そうしたデザインの展示は見に行った価値がありました。

彼のデザインの影響力は死後、現在に至るまで定期的に繰り返しデザイン・ソースとして多くのデザイナーに用いられているほどです。出品されていたカール・ラガーフェルドによるクロエだけではなく、1998年のガリアーノによるクリスチャン・ディオールのコレクション(ショーも『牧神の午後』の動き、イメージが多数ちりばめられていました)、エルメス、稲葉賀恵…と色々なデザイナーが用いています。

画家、舞台美術家、衣裳デザイナー、そしてテキスタイル、ファッション、さらにはコティなどの化粧品パッケージまで手広い彼の活躍を紹介した展覧会でした。

 

会場では『牧神の午後』『薔薇の精』も上演されていました。3月31日に1日だけ日本で上映された2009年のバレエ・リュス記念公演も一部場内で上映されて、こちらもなかなかの混雑ぶりでした。

 

なかなか豪華なカタログも発行されました。出品作品についてはもちろん、詳細な年表に映画、デザイナーとしての顔、また映画との問題など内容も充実しています。会期後もオペラ座や書店で購入可能。