こちらのmemorandum更新が滞っていました。
この夏、印象に残る3匹 (?) の日本オオカミに出会いましたのでそのお話。
と、いってももちろん実際の日本狼ではありません。
本当のニホンオオカミだったら、大ニュースで “時の人” になっているところでしょう。
ここでいうオオカミとは下記の通り。
- Organ Works『WOLF』 7月2~4日 神奈川県立少年センタースタジオHIKARI
- 鯨井謙太郒『GINGAN ARAHABAKI 銀眼荒覇吐』7月9~11日 せんだい演劇工房10-BOX、8月7~8日 中野テレプシコール
- 映画『虎狼の血 LEVEL2』7月20日
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Organ Works『WOLF』
Organ Worksは近年本当に多作、かつ幅広い活動が印象に残る平原慎太郎の振付作品。(ただし本人は富山オーバーホールの仕事で不在、出演もない公演です)青木潤の躍動感と存在感に圧倒されました。
そして絶滅種オオカミの保護と研究、ビニールで封鎖され、保護される空間はこのCOVID19禍にあって現在の人間同士の関係や国同士の関係などの連想も呼び起こしました。
幻の失われた存在であるオオカミを求める研究者の姿は何かを追い求める存在には共通の孤独と狂気がありますし、求められ保護される側のオオカミの生のパワーと抑圧は色々に解釈、イメージの拡大が可能です。
見ていると心がほっこりして、つい毎日のように成長過程を眺めてしまうパンダ、でも彼らは本当はどう生きていたのかな、と思う事があります。
ピンク色のいかにも儚い、(私はお菓子のすあまみたいだと思うのですが)姿からほわほわと毛が生え、体重・体長を毎日測られる存在になりぬいぐるみのように愛でられますが、「保護」は個々の動物の「生」にとっては自然でも幸せでもないようにも思うのです。
話が幾分それましたが、平原慎太郎は近年活躍も評価も目覚ましい振付家ですが、そんな彼の振付は広がりもあり、色々な事を思い起こさせる力がある、ということでもあります。
鯨井謙太郒『GINGAN ARAHABAKI 銀眼荒覇吐』
定方まこととのユニットCORUVUSの印象も強いのでソロが5年ぶりというのは意外でした。
5年前、2016年のソロは『灰のオホカミ』に比べて登場したその瞬間から圧倒的に存在感を増した身体がまず印象的。その最初の場面で観客をもっていき、自分の世界へ引き込むような作品。
自身を育んだ地、仙台、画家の御尊父で仙台公演後に亡くなられたTOJU氏を巡る想い、など様々な想いが身体を通して決してわかりやすくはないけれど、形をもって舞台上に現れた手触りのある作品。
ちなみにタイトルの「アラハバキ」は東北の神、脚の神、蛇を祖霊とする信仰の上に築かれたとも言われる伝承の神。
今回のプログラムノートにも広瀬川の「S字を描き、向こう岸へ渡ってゆく巨大な蛇の姿。」「陸奥(みちのく)の奥底で、もう千年以上眠ったままのアラハバキよ。」とそのイメージが繰り返しでてきます。
当日プログラムに挟み込まれた「鏡像陸奥新生詩篇」も作品の道案内になるのかもしれない。
その詩は「おゝカミがいる!」で結ばれています。
映画『虎狼の血 LEVEL2』
8月20日、ロードショー公開に向けて続々報道されつつある話題作。
先駆けて行われた『虎狼祭―コロフェスー完成披露プレミア』が取れたので一足先に見てきました。
映画そのものも素晴らしかったのですが、ここで取り上げるのはダンスもあったので。(いいわけ?)
開幕と共に登場したのが、まさかのダンス、というサプライズでした。
最近、ダンス公演を見のがしているs**t kingzがオープニングを飾りました。相変わらずキレのいい踊り。
ただ、今回初めてそんな事に気が付けたのでありがたかったのですが、アイドルを取る時のカメラワークというものがあるのだな、と思いました。彼らのダンスの魅力を伝えるには今回とは別のカメラワークがあるのではと、思いました。
とはいえ、多くのダンスを見る、という視線でないお客様は今回のカメラワークを評価する声もあって、難しいなとも思いました。
https://www.youtube.com/watch?v=MlrDuAXhnrA
ダンスの後、出演者が揃い、撮影秘話などをオンラインでつないでのトークが進行しました。
劇場では時間切れで全編を見られなかったのですが、オンラインに全編がアップされています。
https://www.youtube.com/watch?v=UKO_0W0CmLk
肝心の映画ですが、2017年に公開された『虎狼の血』が圧倒的でしたので、あれを超えるのはさすがに難しいのではと思ったのですが、結果から言えば杞憂に終わりました。(意外にもここに書いていなかった、書いた記憶は何だったんでしょう。別のところかな。)
何週間以上たった今も印象は薄れず、ネットフリックスにあった『虎狼の血』を改めて見てしまったほど。
Level2の存在も『虎狼の血』の役所広司あって、でもあるなぁと思ったり。
松坂桃李もいい役者だなぁ、と思ったのは実は『虎狼の血』での演じ方が大きかったのですが、今回はそれを更に血肉化させて感じです。
ヴァイオレンスが苦手な方にはおすすめできませんが、私は好きな映画。
それぞれの「正義」が「想い」が暴走する世界。バレエとは違う美しさがある世界です。
今回はこれまで特に注目していなかった鈴木亮平の怪演(としかいいようのないすごみのある、でもリアルなだからこそ怖い演技)を見て、この人が医師を演じているドラマがある?と久しぶりにTVドラマを見てしまった位。(さすが役者、当たり前ですがこれほど違うキャラを同時に見られると実感しますね)
そして、初めて名前と顔が一致した村上虹郎のぬめっとした独特の存在感も忘れられません。とても難しい役だと思うキンタを演じきった、今後も見たいなと思う役者です。
ちなみに作品中にはダンスは登場しません。
でも今回のタイトル「オオカミ」はネタバレになるので詳細は控えますが、登場します。
そう展開したか…と思いました。
そもそも映画のタイトルにもありますけれど。
続編を期待しつつ。